赤い着物のおかっぱ禿たちが都を監視!平清盛が放った不気味な子どもスパイ集団の実態【後編】:2ページ目
赤い着物におかっぱ頭の集団
『平家物語』の「禿髪」の第二節に、このスパイ集団に触れた部分があります。
(原文)
その故は、入道相國の謀に、十四五六の童部を三百人そろへて、髮をかぶろに切りまはし、赤き直垂を着せて、召し使はれけるが、京中に滿ち滿ちて、往反しけり。おのづから、平家のことあしざまに申す者あれば、一人聞き出さぬほどこそありけれ、餘黨にふれ回して、その家に亂入し、資材雜具を追捕し、その奴をからめ取つて、六波羅へ率て參る。
されば、目に見、心に知るといへど、詞にあらはれて申す者なし。六波羅殿の禿といひてんしかば、道を過ぐる馬車もよぎてぞほりける。禁門を出入すといへども、姓名を尋ねらるるに及ばず、京師の長吏、これがために目を側むと見えたり。
現代風に意訳すると‥
入道相國(平清盛)の計画で、14〜16歳の子どもを300人揃え、髪をおかっぱに切り揃え、赤い直垂(ひたたれ/主に武家社会で用いられた男性用衣服、日本の装束の一つ)を着せた集団を京の都に放って行き来させていた。
その子らは平家の悪口を話しているのを聞きつけると、その家に乱入して家財道具を没収して、その者をひっとらえて六波羅(清盛のいるところ)に連れていく。
「六波羅殿の禿」といえば場所も避けて通った…‥
という内容です。
本当ならば可愛いさかりの14〜16歳の子どもたちなのに、皆同じおかっぱにさせられお揃いの赤い着物を着ているという姿を想像するだけで、何やら不気味な感じがします。
300人もの子ども達が表情を消したまま、「ん?清盛さまの悪口を言ってるのか?」と、人々が立ち話をしている後ろにそっと忍び寄ったり、家の外で耳をそばだてたり、勝手に家の中に押し入ったりしている姿を想像すると、子どもだけに背筋がぞっとするようです。
この六波羅殿の禿たちが、宮中を出入りする際は、役人たちも見て見ぬフリをしていたと書いてるので、よほど恐れられていたのでしょう。