砂糖は昔は高級品だった!日本国内での普及・製造の歴史をたどる【前編】
奈良時代に輸入された高級品
今ではいつでもどこでも安く手に入る砂糖。しかし、ここまで簡単に庶民が手に入れられるようになったのは、ごく最近のことです。
前編・後編に分けて、砂糖が日本で普及し製造されるようになった歴史を辿ってみましょう。まずは古代から江戸初期にかけてです。
我が国に砂糖が最初に持ち込まれたのは奈良時代のことでした。
これについては、754年に鑑真が中国から持ち込んだという説と、遣唐使が持ち帰ったという2つの説があります。
国内で砂糖にまつわる記録が見られるのは、756年に奈良の正倉院に納められた「種々薬帖」という目録です。
これは756年に、東大寺に献上された聖武天皇の遺品を一覧にまとめたもので、この中に「蔗糖二斤一二両三分并椀」の記録があります。「蔗糖」が砂糖のことです。
当時の砂糖は貴重品で、薬として扱われていました。平安時代中期頃には貴族階級に調味料として使われるようになりますが、まだ庶民が手に入れるのは難しい高級品でした。
武士の時代に流通量が増える
さて、鎌倉時代に禅宗が伝来すると、喫茶の風習が広まりました。さらに饅頭と羊羹のルーツとなる「点心」が中国から持ち込まれます。
当時の饅頭と羊羹は甘くありませんでしたが、室町時代には砂糖入りの「砂糖饅頭」や「砂糖羊羹」が作られることもありました。
さらに15世紀半ば頃から茶の湯が流行すると、それらが茶菓子としてふるまわれるようになります。それでもまだ、当時は砂糖が入ったものは高級品でした。
その後、戦国時代に南蛮貿易が始まると、カステラやコンペイトウなどの南蛮菓子が持ちこまれます。織田信長がコンペイトウを好んでいたのは有名な話ですね。
その後、砂糖の流通量は徐々に増えていき、南蛮菓子や砂糖が大名への贈答品として用いられるようになり、一般庶民の間にも砂糖が広く伝わっていきました。
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