日本語では「疑わしいことや怪しい」ことを「胡散臭い(うさんくさい)」なんて言ったりしますね。この胡散臭いの「胡散」とは何なのか、どんな臭いがするのでしょうか?
まず「臭い」の方から。これは、臭気を表すものではなく、「~らしい」を意味している言葉。
そして、問題の「胡散」。これは、不審な様子を表す言葉なのですが、その由来は諸説あります。
ひとつは「烏盞(うさん)」という、抹茶茶碗のひとつである天目茶碗(てんもくぢゃわん)に使われる上薬(うわぐすり)が由来という説。
江戸時代、烏盞と呼ばれる黒い釉の天目茶碗が、とても高価なものだとしてもてはやされた時代があったようです。その茶碗は高麗産の焼き物とされていましたが、実際は中国製などともいわれ、生産地も年代もはっきりしませんでした。
このことから、生産地や年代がはっきりせず、どうも怪しい、偽物くさい茶碗のことを「うさんくさい」というようになり、それがやがて他の物もさすようになったと呼ぶようになったとか。
また「胡乱(うろん)」という言葉が転じたというものとも言われています。
胡乱は、室町時代に中国から伝えられた言葉で、「怪しくて疑わしい、不確実」という意味を持ちます。胡乱は中国北方・西方の民族「胡(えびす)」が中国を攻撃した時、中国の住民が慌てふためき混乱が生じたという故事が由来となっているそうです。
当初は「乱雑」という意味を持っていた言葉が、時代が立つにつれて「怪しい、疑わしい」という意味の言葉になり、さらに変化して「胡散」となったのだとか。
一見、どちらも信ぴょう性があるような気がしますが、その一方でどちらの由来も「うさんくさい」だけに、いまだ由来が定まっていない、そんなかんじでしょうか。
いずれにしても、江戸時代以降に使われるようになった言葉になります。
参考
日本語倶楽部『語源500 面白すぎる謎解き日本語』 (2019 KAWADE夢文庫)