【べらぼう】智恵内子(水樹奈々)だけじゃない、江戸・天明期に活躍した女性狂歌師たち
三十一文字で世相や生活など、様々なことがらをあけすけに表現する狂歌が、江戸・天明期(1781〜1789年)を中心に大流行しました。
身分の上下や貧富の格差、老若男女にかかわらず人々を熱狂させた狂歌は、まさに一時代を築いたと言えるでしょう。
大河ドラマ「べらぼう」では、智恵内子(水樹奈々)が唯一、女性狂歌師として活躍する姿が描かれていますが、当時に活躍した女性狂歌師は他にもおり、その作品も現代に伝わっています。
今回は大田南畝選『狂歌才蔵集』より、女性狂歌師たちの作品をピックアップしました。
天明狂歌の三内子(さんないし)
世話内子(せわの ないし)
【狂号】世話がない。ここでは呆れ返る意味で用いられます。
ゆふべまで 風にほぐれし かた糸の
けさうち紐に むすぶ青柳※世話内子(巻第一)
【歌意】昨夜は一本ずつ風になびいていた柳の枝が、今朝は打紐のように結ばれて(からまって)いる≒昨夜の風は凄かったなぁ。
【補足】前はみんな自由に活き活きしていたけど、今ではみんな右ならえ。締めつけの厳しくなったこと!
智恵内子(ちえの ないし)
【狂号】智恵がない。謙遜であり、控えめな性格だったのかも知れません。
山のべに すめども歌の 名なし雉
草のねをのみ ほろほろと鳴く※智恵内子(巻第一)
【歌意】山に棲んでいるけど、歌はさっぱりな雉(きじ)は、草の根を呑んでホロホロと鳴いているよ。
【補足】狂歌師の皆さんとお付き合いさせていただいているけど、私の狂歌は今ひとつ。爪の垢を煎じて飲みながら、下手っぴな狂歌を詠んでいます。
暇内子(ひまの ないし)
【狂号】暇がない。いつも忙しい理由は、仕事か趣味か道楽か。
星合の 夜半もふくれば つま琴の
ひき捨てされて 牛は独寝※ひまのないし(巻第四)
【歌意】七夕の夜、真夜中を過ぎれば琴も牛も放置されているね。
【補足】織姫は琴を片づけもせず放り出し、彦星も牛をつなぎもせずに放り出して、二人でイチャイチャしてることでしょう。
むすびても 人の口端に いはた帯
ややあらはるる 恋の塊※ひま内子(巻第十)
【歌意】人の口を結んでも(口止めしても)、岩田帯を締めても、お腹に孕んだ恋の塊(やや≒赤子)を見れば一目でバレてしまうね。
【補足】そのままです。
