【べらぼう】智恵内子(水樹奈々)だけじゃない、江戸・天明期に活躍した女性狂歌師たち:3ページ目
〜子(こ)系の女流狂歌師たち
吉野葛子(よしのの くずこ)
【狂号】吉野名物・吉野葛。彼女の好物だったのでしょうか。
又ひとつ 老木(おいき)となるは をしからで
育つあしたを まつのみどり子※よしのの葛子(巻第六)
【歌意】また一つ年輪を重ねながら、松の木がすくすくと育って行くよ。
【補足】待ちぼうけながら、また一つ歳を重ねたけど、後悔はしないさ。明日に希望を持って、これからも待ち続けるよ。
苧環賤子(おだまきの しずこ)
【狂号】しずのおだまき、繰り返し……静御前のパロディ。
よろこびの こぼれ松の葉 かんざしの
かざしに挿して 幾千代も経ん※をだまきのしづ子(巻第九)
【歌意】喜びがこぼれる松の葉を、簪(かんざし)のように髪に挿しました。この松の葉、ずっと大事にします!
【補足】待ちに待ったあなたが帰ってきた。お土産なんかなくても、あなたがテキトーに挿してくれた松の葉の簪さえ、私はとても嬉しいのです。
傀儡筆子(くぐつの ふでこ)
【狂号】操り人形が筆をとる、転じて「皆さんの真似ばかり」という謙遜。
うき草の ねもはも今は 絶にけり
池の氷の つみ深くして※傀儡筆子(巻第十三)
【歌意】浮草の根も葉もみんな枯れてしまいました。池の氷があまりにも深いので……。
【補足】かつては浮名を流した私ですが、今は誰も見向きしてくれません。これまで積み重ねた罪が、あまりに深いからでしょうね……。
ちなみに『古今狂歌袋』では、同じ狂歌が手習筆女(てならいの ふでじょ)名義で載っています。
