実は黒歴史だった?「此の世をば……」藤原道長のこの歌を一体誰が後世に伝えてしまったのか?:2ページ目
右大将GJ!藤原実資が出した「助け舟」
……で、ドン引きしたのは同席した皆さんです。
(どうしよう……こんな欲望むき出しの下品な歌に返歌なんかつけようものなら一生の恥、いやいや末代まで子孫に恨まれるよ……)
(と言って権力絶頂の道長が詠んだ歌をスルーなんてしようものなら、後でどんな目に遭わされるか……)
(あぁ、どうすればいいんだ……)
などなど誰もが困っていた(であろう)ところ、助け舟を出したのが右大将・藤原実資(ふじわら の さねすけ)、道長にとって大叔父に当たる人物です。
「エークセレーント!こんな素晴らしく完璧な歌に余計な事をしたら勿体ないっスよ!……そうだ!この歌をみんなで唱和しましょう!」
(余申云、御歌優美也、無方酬答、満座只可誦此御歌……/余の申して云ふ、御歌の優美なれば答うるに方無し、満座ただこの御歌を誦うべし……)
「さんーはいっ!」……とまでは多分言っていませんが、結局みんなで道長の歌を「此の世をば~」と何度も唱和、道長の気がすんだところで、その夜はお開きとなったそうです。
まったく、権力者のご機嫌取りは大変ですね。
……と、ここだけ聞くとなんだか実資がえらいおべっか使いのようにも見えますが、なんせここは京の都。
「100%まじりっけ無しの皮肉」である事は、その場の誰もが解っています。
きっと内心「実資ありがとう!」「右大将GJ!」等と思っていたであろう事は、想像に難くありません。
めでたしめでたし。