なぜ暗闇の石槨内に星空を描いた?世界遺産・キトラ古墳の極彩色壁画と「古代人の宇宙観」【前編】:2ページ目
キトラ古墳に描かれた色彩壁画について
さて、ここからはキトラ古墳の石槨内に描かれた壁画をみていきましょう。
その構成は、北壁に玄武、東壁に青龍、南壁に朱雀、西壁に白虎。そして、各壁面には十二支像が配され、天井には天文図、日像・月像が描かれるというものです。
四方の壁に描かれた玄武、青龍、朱雀、白虎の四神は、天の四方を司る神獣とされます。
玄武(北壁)は冬の季節を象徴し、色は黒があてられます。青龍(東壁)は春の季節を象徴し、青があてられています。
そして、朱雀(南壁)は夏の季節を象徴し、色は赤があてられ、白虎(西壁)は秋の季節を象徴し、白があてられているのです。
また、四神の下には、動物の頭と人間の体で十二支を表した獣頭人身の十二支像が描かれています。右手には武器や道具を持っているのが特徴です。
北壁中央の子から時計回りに、方位に合わせて各壁に3体ずつ、計12体が配置されていたと考えられます。しかし、現在確認できるものは、子、丑、寅、午、戌、亥の6体です。
そして、天井中央部に描かれた「キトラ天文図」と称される天文図。天井の東西にある斜面部分には、東側に金箔で日像が、西側には銀箔で月像が表現されています。
この天文図は、天の北極を中心とした円形の星図で、360個以上の星々が金箔であしらわれており、それらを朱線によって結んだ中国の星座は、現在のところ74座が確認されています。
このキトラ天文図の大きな特徴は、朱線で描かれた4つの大円です。
内側から順に「内規」「赤道」「外規」とされる3つの同心円に加え、北西にずれたもう一つの円は「黄道」を示しています。
これらの構成や星の配置などから、観測地は北緯34度付近、中国の長安周辺とする説があります。ただし、天文図の観測地や制作地については、なお検討を要するでしょう。
いずれにしても、4つの大円を備えたキトラ天文図は、本格的な中国式星図としては現存する世界最古の実例と評価される、極めて貴重なものです。
ちなみに、北緯34度という緯度は「太陽の道(レイライン)」とも呼ばれ、神社など多くの聖地がこの線上に位置すると考えられています。
この点もまた、キトラ古墳を語るとき、尽きることのない興味をかき立てられるのではないでしょうか。
さて、[前編]はここまでとします。
[後編]では、出土した遺物と、今回取り上げた墳丘や壁画の特徴を踏まえ、いよいよキトラ古墳の被葬者像に迫っていきます。どうぞ、ご期待ください。
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