『べらぼう』の感動ふたたび!総集編の前に“エンタメの神々”の胸に刺さった名場面をもう一度【チーム蔦重編】:3ページ目
一番“陽キャ”!実はこだわり迷い悩み抜く北尾政演
「べらぼう」イチの“陽キャ”クリエーター・北尾政演(山東京伝/古川雄大)。常にうれしそうに「つったじゅぅ〜さ〜ん」と、店に入ってくる姿がお馴染みでした。
ちゃらんぽらで「吉原遊び」しか考えていないようで、実は、“産みの苦しみ”を抱えコツコツと仕事に打ち込む政演。努力して苦しむ姿を見せるのは粋じゃないとばかりに、一人悶々と苦しみを抱えて創作活動をしていました。
そんな一面を、真面目で堅物の恋川春町(岡山天音)に見抜かれ、おまえは俺と同じと言われ「来い!」と両手を広げられ「嫌だ!!」と全力で拒否するシーンは笑えましたね。
政演の忘れられない場面といえば、第29回「江戸生艶気樺焼」。山東京伝の傑作黄表紙『江戸生艶気樺焼』を、まさかの劇中劇での実写化は多いに話題を呼びました。
山東京伝が演じるモテばかり考えている金持ち仇気屋の一人息子・艶二郎は、惚れた花魁と駆け落ちします。派手な揃いの着物を来て、遊廓の窓を壊し派手に見送られて、「また来るよ〜!」と手を振る姿は、あまりのばかばかしさに大笑いの名場面でしたね。
そして、38話「地本問屋仲間事之始」。蔦重の依頼で作った本のことでお上に罰せられてから、二人はギクシャクした関係になっていました。
ある日、蔦重は、自分の行動がお上の逆鱗に触れさらに本作りへの取り締まりが厳しくなったことを本に携わる人々を集めて詫びます。
皆に吊るし上げにされる中、「本を作るなら町奉行所の指図を受けよ」という命令を逆手に取り、「地本問屋が一斉に多くの草稿を町奉行に持ち込みぎゃふんといわせる」ことを提案しました。
「そんな無理聞けるか!」と地本問屋たちが激怒する中、うずうずする様子を見せていた京伝。
そこへ、「おう!ちょいと失礼するよ」と一同の前に躍り出たのが重政と春章です。「んじゃ、助太刀に行きますか」「弟子が世に出られなくなっちまうからね」と、皆の様子を見ながら割って入るタイミングを見計らっていた、さすがの師匠二人でした。
「俺たち役に立てっかな?」の言葉が実にかっこよかった。一番大変なクリエイター側が自ら、「俺らがそれ引き受けるぜ」と名乗り出たのですから。
京伝は、そんな師匠の男気に感化され、自ら「蔦重さん」と声をかけます。「俺…戻って草稿書いてきますね!」と。「面倒に巻き込まれたくない。ふわふわしていたい」と言っていた京伝が「書いてきますね」と宣言したのは嬉しい場面でした。
驚きつつも蔦重は「いっそ、そのまま出せるもん、頼むぜ…!」と言ってか「京伝先生!」と敬称をつけます。
やはりプロデューサーは「夢」を形にしてくれるクリエーターを、クリエーターは作品を売り出してくれるプロデューサーを、互いにリスペクトしていることが伝わる感動的なシーンでした。

