なぜ静岡はお茶の名産地になったのか?――幕末〜明治、勝海舟と侍たちの“再出発”と挑戦:2ページ目
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一杯の緑茶に込められた思い
牧之原台地の開墾によって、静岡茶の生産量は急速に拡大しました。明治の終わりには全国の約半分を占めるほどになり、現在でも全国のお茶の約四割を静岡県が生産しています。
牧之原には今も「勝海舟ゆかりの地」や「勝茶」といった地名・ブランドが残り、彼の功績と侍たちの努力は地域の誇りとして語り継がれています。
静岡茶は、ただの特産品ではありません。それは、時代の変化に挑み、失われた誇りを取り戻そうとした人々の物語なのです。
静岡茶の香りの中には、鎌倉時代に茶の種をまいた僧侶・聖一国師の知恵、徳川家康が愛した駿府の茶、そして明治の侍たちが切り開いた牧之原の緑が重なっています。
一杯の緑茶を口にするとき、もしその歴史に少し思いを寄せてみたら、いつものお茶が少しだけ違って感じられるかもしれません。静岡の茶畑を渡る風のように、遠い時代の人々の息づかいが、今も私たちの暮らしの中に流れているのです。
参考資料
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