江戸時代、なぜ犯罪者はヒーロー化したのか?武士の堕落が生んだ鼠小僧ら「義賊」の真実:3ページ目
エンタメとして
また、江戸時代後期の武家は深刻な財政難に見舞われ、富裕な農民や町人から御用金を徴収し、その見返りとして苗字帯刀を許していました。
これは要するに農民や町人の「武士化」なのですが、自分たちで築いた厳格な身分社会を自分たちで崩す姿は、庶民からの武家不信を招きました。
そのため、農民や町人も武芸の腕を磨くなどするようになり、庶民による武士へのアンチテーゼが湧き上がるようになります。
こうした中で生まれたのが義賊です。国家や権力者からは犯罪者とみなされたものの、反対に大衆から見れば、彼らは歪んだ国家権力に反発するヒーローとなりうる存在でした。
そんな義賊たちに、庶民は自分たちの国家への反発心や憤り・やるせなさを投影したのです。
先に書いた通り、現代社会では実在した犯罪者がヒーロー視されることはまずありません。
しかしエンタメの世界では、反社会的な存在が、かえって庶民の味方として描かれることは珍しくありませんね。その点だけは、江戸時代も現代も同じだと言えるでしょう。
参考資料:縄田一男・菅野俊輔監修『鬼平と梅安が見た江戸の闇社会』2023年、宝島社新書
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