
悪名高い”開拓使官有物払い下げ事件”の真相!五代友厚の名誉を取り戻した“幻の史料”とは?【後編】
知られざる弁明書
【前編】では、五代友厚の悪評のもとになったいわゆる開拓使官有物払い下げ事件が誤解だったことと、それが政治史に及ぼした影響を解説しました。
悪名高い”開拓使官有物払い下げ事件”の真相!実業家・五代友厚は新聞の誤報に翻弄されていた【前編】
五代友厚の汚名大阪経済の礎を築いた明治時代の実業家・五代友厚には開拓使官有物払い下げ事件で、国有資産の払い下げを不当に安く受けようとした「政商」との悪評があります。しかし、五代を批判した当…
【後編】では、五代が記した知られざる弁明書の存在や、五代友厚の人物像について見ていきましょう。
実は、歴史史料として五代の「弁明書」が存在します。
それは関西貿易社の副総監を務めた広瀬宰平に宛てたもので、そこでは事件を巡り「世間ではもっぱら自分が利益を独占していると噂しているが、潔白である」などの主張が記されたものです。
彼は新聞紙上で反論を試みたものの、政府要人から政治の安定のために黙っててほしいと頼まれ、沈黙を守ったそうです。
この弁明書の存在も長く世に知られることがなかったため、誤った記事を根拠とした五代像が定説として流布したのでしょう。
名誉回復をめざして
近年は、そんな五代の名誉を回復しようという活動が、大阪市立大(現・大阪公立大)の関係者によって進められています。
そのひとつとして、事件の記述の見直しを教科書会社各社に求めたところ、事件における官有物の払い下げ先が「開拓使官吏が退職して設立する予定の民間会社」に改められたことが挙げられます。
教科書の記述も、史実に沿ったものに変わりつつあるのです。
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