
大河『べらぼう』鳥山検校と五代目瀬川(小芝風花)の悲惨なその後…咲くも散りゆく4本の徒花【前編】:2ページ目
惚れた女が体を売るという現実に気が付く
ある日、蔦重は瀬川が盲人で金持ちの客・鳥山検校(市原隼人)と親しげにする姿を目撃してしまいます。
茶屋の軒先に座り瀬川を待っていた鳥山検校は、「お待たせいたしんした」と声をかけた彼女に「遅かりし由良助」と言い手を握ります。「御生害(ごしょうがい)には間に合いんしたようで」とにこやかに返す瀬川。そしてお互いに見つめ合い「ふふふ」と笑う二人でした。
「遅かりし由良助」は、『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助(大石内蔵助がモデル)が主君の切腹に間に合わなかった場面のセリフで、待ちかねていた場合や、もう少し早ければ間に合ったときなどに使われます。
瀬川が来るのを楽しみにしていた検校のセリフも、瀬川の「切腹には間に合いましたでしょう」というセリフも実に気の効いたものでした。息の合ったやりとりに二人の相性の良さを感じます。
色恋に鈍感な蔦重でも、瀬川と鳥山検校の互いを思い遣る優しい仕草に、暖かい想いが流れていることを察知し「嫉妬」という感情が湧いたのだと思います。
そんなある日、鳥山検校から身請け話が持ち上がったことを聞き、さらに焦った蔦重は彼女を九郎稲荷に呼び出します。
けれどもストレートに「おまえが好きだ!」と切り出せず、まずはビジネス絡みで「おまえがいなくなれば吉原から客が離れる」から身請け話は断れと言い、瀬川に「自分勝手過ぎる」と責められます。当然でしょう。
自分を責める瀬川に慌てて焦ったのでしょうか。さらに「鳥山は悪どい金儲けをする人間だ」「この世のヒルみてえな連中だぞ!」と激しく罵倒してしまいます。
その言葉に、去ろうとしながら思わず振り返った瀬川は「あんただってわっちに吸い付くヒルじゃないか。同じヒルなら、まだよそ様に吸い付いてくれる方が!」と、怒り・哀しみ・絶望などさまざまな感情が籠った言葉を放ったのでした。
蔦重は、ようやく素直に涙ながらに「俺が幸せにしたい」と心情を吐露し懇願します。その言葉に心を動かされた瀬川は、彼と一緒になることを決意し、身請け話を断るのでした。