お稲荷さんの正体は狐…ではなく人喰い鬼!?稲荷神社にまつわる深すぎる闇:3ページ目
ただ巻き込まれただけの、もう一つのお稲荷さん
荼枳尼天を祀る寺のお稲荷さんは、荼枳尼天の過去の過ちから、祟り神と誤解されてしまいました。そしてその火の粉はなんと、荼枳尼天とは何ら関係のない、神社系のお稲荷さんにまで飛び火したのです。
京都の伏見稲荷大社を総本社とする神社系のお稲荷さんは、宇迦之御魂神(ウガノミタマノカミ)を祀っています。神社系のお稲荷さんに狐が多数祀られているのは、宇迦之御魂神の使いが狐であるためです。
しかしここで、
- 狐は人を化かす(という誤解)
- (狐の繁殖力の高さから)狐は仲間を増やして、人間の暮らしを脅かす
- 狐は畜生(野生動物)だから、愚かな行い(人を祟る)こともやってのけるに違いない
荼枳尼天騒動で発生した火の粉は、狐に対する誤解に着火します。
その結果、お稲荷さん=祟り神といった誤った理解が広がりました。
おわりに
お稲荷さんには、寺に祀られた荼枳尼天と、神社に祀られた宇迦之御魂神とその従者である狐たちの2パターンがありますが、いずれも祟り神とは無縁です。
過去には人肉を喰らう美しき鬼であった荼枳尼天もすっかり改心し、宇迦之御魂神と同様に五穀豊穣をもたらす神となりました。また狐も神の使いに過ぎず、人を祟る力はありません。むしろ懸命に神に使え、人間の幸せを助けてくれる存在です。
しかし人為的力の及ばぬ世界を恐る思いが、お稲荷さんを祟り神に仕立て上げてしまったのでしょう。
「稲荷信仰を止めると祟られる。」
この言葉には、信心深さの重要性を示唆する意味合いもあるそうです。根気強く祈り続け、願い続け、努力し続けることで、ようやく成就する、と。
神話の昔の悪行により、今なお祟り神のイメージを払拭できない荼枳尼天の姿は、改心を取り巻く困難と、それでも諦めない強い心の重要性を教えているのかもしれません。