藤原道隆の死により中関白家の没落が始まる…大河ドラマ「光る君へ」4月28日放送の解説・振り返り:2ページ目
まひろが読んでいた『荘子』と書いていた「胡蝶之夢」とは?
道長らによる必死の看病が功を奏して、死の淵からはい戻ったまひろ(紫式部/吉高由里子)。
自宅で読んでいた『荘子(そうじ)』、そして書いていた「胡蝶之夢(こちょうのゆめ)」とは何でしょうか。
荘子(そうし)とは古代中国大陸の道家(どうか。道教思想家)で、紀元前4世紀から紀元前3世紀にかけて活躍しました。
※なお著書について呼ぶ時は「そうじ」、著者名を呼ぶ時は「そうし」とするのが通例です。
まひろが書いていた「胡蝶之夢」とは、この『荘子』に出てくるエピソードの一つでした。
昔者莊周夢爲胡蝶。栩栩然胡蝶也。自喩適志與。不知周也。俄然覺、則蘧蘧然周也。不知、周之夢爲胡蝶與、胡蝶之夢爲周與。周與胡蝶、則必有分矣。此之謂物化。
※『荘子』より
【意訳】昔に見た夢の話。荘周(荘子の実名)は一匹の蝶々になって、自由気ままに舞い遊んでいた。自分が荘周であるかなんて考えもしないほどの楽しさである。
目が覚めると、自分が人間の荘周であることを思い出した。
これは人間の自分が蝶々になった夢を見ていたのか、もしかしたら実は蝶々の自分が人間になっている夢を見ているだけかもしれない。
自分が人間なのか蝶々なのか分からなくなってしまったが、どちらかという区別はあるものだ。
……何だか寝起きの頭で話を聞いているような気分ですね。
だから何だ早く目を覚ませ、と切り捨てなる一方、何か考え込んでしまいそうな余韻も残ります。
単なる戯言なのか、それとも底知れぬ奥深さがあるのかも知れません。
道長との交情は夢だったのか、あるいは道長と一緒な自分が孤独な夢を見ているだけなのか……。
そんなことを思いながら、まひろは『荘子』を書写していたのかも知れませんね。