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「鎌倉殿の13人」戦闘狂・源義経が大暴れの予感、木曽義仲主従の壮絶な最期!第16回「伝説の幕開け」予習

「鎌倉殿の13人」戦闘狂・源義経が大暴れの予感、木曽義仲主従の壮絶な最期!第16回「伝説の幕開け」予習

『平家物語』が描く義仲の最期・兼平の奮戦虚しく……

義仲を見送った兼平は、ここが最期の晴れ舞台と大音声に呼ばわります。

「日来は音にも聞きつらん。今は目にも見給へ。木曽殿の御乳母子、今井の四郎兼平。生年三十三にまかりなる。さる者ありとは、鎌倉殿までも知し召されたるらんぞ。兼平討つて見参に入れよ」

※『平家物語』巻第九「木曽殿最期」より

噂に聞いたことはあるだろう、今こそ眼(まなこ)に焼きつけろ。我こそは木曽殿が乳兄弟なる今井四郎兼平。殺せる者がいないから、今年で三十三歳になってしまった。とうぜん鎌倉殿も知っていよう(=大手柄になる)から、我が首級を獲ってご覧に入れるがいい!

言うなり兼平は残った矢を次々に射放ち、いちいち生死は確かめていないものの、ことごとく馬から射落とされます。

矢が尽きれば弓を擲ち、白刃を抜き放って縦横無尽に斬り回りました。あまりの強さに怯んだ敵は遠巻きに射殺そうと矢を放ちますが、鎧が丈夫であったので鏃(やじり)が貫通せず、傷も満足に与えられません。

一方の義仲は、ただ一人で松原を駆け抜けていました。しかし入相(いりあい。夕暮れ)時だったため薄氷の張った深田に気づかず乗り入れてしまい、馬の顔が見えぬほど沈み込んでしまいます。

あぁ、どうしよう……不安に背後を振り向いた義仲の内甲(うちかぶと。兜をかぶっている内側。無防備になりやすい部分)を石田次郎為久に射られて重傷を負った隙に首級を獲られてしまいました。

「この日来、日本国に聞こえさせ給ひつる木曽殿をば、三浦の石田の次郎為久が討ち奉つたるぞや」

※『平家物語』巻第九「木曽殿最期」より

その名乗りを聞いた兼平は、まだ充分に戦えたものの、もはや戦う理由を失い自決します。

「今は誰を庇はむとてか軍をもすべき。これを見給へ、東国の殿ばら。日本一の剛の者の自害する手本」

※『平家物語』巻第九「木曽殿最期」より

戦う理由がなくなった以上、これ以上の抵抗は無益……「坂東武者ども、よう見ておけ!自害の手本を見せてやる!」兼平は大音声で叫ぶなり、太刀の切先をくわえて馬を飛び降りました。

その刃は兼平の喉を貫き、そのまま絶命したという事です。

終わりに

以上、『吾妻鏡』と『平家物語』が伝える木曽義仲・今井兼平の最期を紹介しました。

すっかり気弱になってしまった義仲をどこまでも励まし、立派な最期を遂げさせてやりたい兼平の忠義は、後世まで乳兄弟の絆を示す鑑として伝えられます。

石橋山で裏切った頼朝の乳兄弟、山内首藤経俊(演:山口馬木也)に教えてやりたいですね。

果たして東国へと落ちていった巴御前はこのまま退場してしまうのか、あるいは義仲より重要な役割を託されるのでしょうか。

大河ドラマではこれらをどれくらい再現しつつ、三谷アレンジを加えてくるのか、今から楽しみにしています。

※参考文献:

  • 五味文彦ら編『現代語訳 吾妻鏡 2平氏滅亡』吉川弘文館、2008年3月
  • 佐藤謙三 校註『平家物語 下巻』角川ソフィア文庫、1959年9月
  • 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月
  • 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月
 

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