【鎌倉殿の13人】激しい風雨も何のその…源頼朝のために身体を張った御家人たちのエピソード:2ページ目
土砂降りの雨にも負けず
供養ノ日東大寺ニマイリテ、武士等ウチマキテアリケル。大雨ニテアリケルニ、武士等ハレハ雨ニヌルヽトダニ思ハヌケシキニテ、ヒシトシテ居カタマリケルコソ、中々物ミシレラン人ノタメニハヲドロカシキ程ノ事ナリケレ。
※『愚管抄』より
【意訳】供養のため東大寺に参列したところ、警護の武士どもが会場を取り巻いていた。
この日は土砂降りであったにもかかわらず、連中は自分が濡れていることに気づきもしないかの様子。
誰一人持ち場を離れることなく立ち続ける姿は、常識人にとって驚愕モノであった。
……坂東武者とは、何と野蛮な連中であろうか。慈円をはじめやんごとなき公家や僧侶たちは、誰もがそう蔑み、かつ恐れたことでしょう。
今、この凄まじい連中が天下の主導者たらんとしている。そんな逃れがたい事実を。
我らが鎌倉殿のためならば……
しかし、当の御家人たちだって(公家たちや現代人よりはタフだったにせよ)流石に寒かったはずです。
それでも耐え抜いたのは、他でもない頼朝のため。
「我らが鎌倉殿に、恥はかかせられぬ」
「我らの精強さを見せつけ、鎌倉殿に一目置かせしめるのだ」
だから雨ごときに負けてはおれぬ。風ごときに怯んでもおれぬ。
先ほど『吾妻鏡』にあった
雨師風伯之降臨、天衆地類之影向、其之瑞揚焉。
【意訳】激しい風雨は神々の祝福、実にめでたい。
……という表現も、恐れおののく都人らを笑い飛ばす意図が感じられます。
「何だお前たちは。こんな雨風くらい、我ら坂東武士は何ともないわい!」
「そんな屈強な我らを束ねる、いやさ我らが担ぎ上げる鎌倉殿を、ゆめゆめ侮るでないぞ!」
頼朝への愛情と東国武者の矜恃を、これでもかと見せつけたのでした。