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新選組4人相手に死闘を演じ「ぜんざい屋事件」に散った志士・大利鼎吉が詠んだ辞世の心【後編】

新選組4人相手に死闘を演じ「ぜんざい屋事件」に散った志士・大利鼎吉が詠んだ辞世の心【後編】

エピローグ

ところで鼎吉は、死の前夜に辞世の句を残していました。

ちり(塵)よりも かろき(軽き)身なれど 大君に
こころばかりは けふ(きょう。今日)報ゆなり

【意訳】塵よりも軽い私ですが、畏れ多くも天皇陛下を思う心だけは誰にも負けないことを、今日こそ証明いたしましょう!

まるで「明日死ぬ」ことを予言しているようですが、尊皇攘夷の志を抱いて土佐を脱藩し、逃げ逃げ逃げして苦境に耐え抜いている自分が、ただ一つ誇れる心を、死に華として咲かせたい……そんな思いで生きていたのでしょう。

「そんな大利君、ちょっと重すぎるよ」

現代日本に生きる24歳なら、悲壮感ただよう鼎吉の痛々しい姿を、そう笑うかも知れません。

「生きてさえいれば、もっと楽しいことがいっぱいあるよ」

確かにそれもそうでしょう。でも、自分が楽しいだけじゃ満足できない、それよりももっとスケールの大きな「みんなの幸せ」を願う若者たちが、昔はたくさんいたのです。

神話の時代から現代に至るまで「みんなの幸せ」を一心に祈り続ける天皇陛下こそ平和な日本の象徴であると信じて闘い、尊皇攘夷の志に死んでいった若者たちがたくさんいたのです。

その行動や判断に賛否こそあれ、少しでも彼らに想いを寄せることが、よりよい日本の社会を築き上げる礎となるのはないでしょうか。

【完】

※参考文献:
伊藤成郎『新選組は京都で何をしていたか』KTC中央出版、2003年10月
菊池明『新選組の真実』PHP研究所、2004年1月
田中光顕『維新風雲回顧録』大日本雄弁会講談社、1928年3月

 

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