- No.34「いけしゃあしゃあ」の語源は何?調べた結果をいけしゃあしゃあと紹介します
- No.33最終話【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第33話
- No.32【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第32話
【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第1話:3ページ目
男が煽ると、背後(うしろ)に集まっていた小さな禿たちは目を輝かせ、びろうどの帯をふりふり、
「姐さん、姐さん」
と口々に自分の姉女郎を呼んだ。彼女たちは幼くして既に男共に愛されるための術を備えているようで、その愛らしさに自然と男の頬も緩んだ。
しかし巾着のように緩んだくちもとは、すぐに緒締めで締め直されるが必定。禿たちが呼んだ途端、大向こうから縦縞の揃いに漆の木履(ぽっくり)の姉女郎たちが肩で風を切り飛んできて、目を吊り上げて凧売りに嚙みついた。
「兄さん!まアた今年もこんな場所でがき相手に凧なんざ売り付けて、廓内(なか)で飛ばす場所なんてありゃしないよ!」
「さあな、こんな美人(うっつく)に買ってもらえたら、この凧ア喜んで座敷のあっちイこっちイ飛回りまさア」
「あんた、ほんに馬鹿だねえ」
軽く目をむきながらも女たちはまんざらでもない様子だ。一人の若い女郎が、魯智深の凧を手放さない禿を指し、
「そんなら、この子が持ってるそれ一つ。幾らだっけ?」
「三百文」。
男が悪びれもせずにしれっと放ったその値に、女の顔が曇った。
(ちょいと高えわいな)
とは、江戸ッコ女郎は口が裂けても言わないが、ほんの一瞬まつげが揺れた。
普通の凧は一枚張りなら安ければ十六文、二枚張りでも四十八文ほどで買える。
吉原遊廓についてのマメ知識はこちら
吉原はどんな場所だったの?江戸時代の見取り図や浮世絵で吉原遊廓をご案内
江戸時代の幕府公認遊廓、吉原。ひとくちに吉原といっても、江戸時代初期に日本橋にあった元吉原、1657年の明暦の大火後に浅草の裏手に移動してからの新吉原の2つあり、落語などに出てくる「吉原」はたいてい新…
江戸時代の吉原遊廓の妓楼の中はどうなってたの?浮世絵や絵草紙で詳しく紹介!
前回「江戸時代の見取り図や浮世絵で吉原遊廓をご案内」では、吉原遊廓の全体像をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。[insert_post id="70543"]今回は吉原に並ぶ妓楼(…
こんなにいた!遣り手、若い衆…吉原遊廓の妓楼(女郎屋)の中に暮らす人々
前回は吉原に並ぶ妓楼(ぎろう)の中から一つの女郎屋に焦点を当て、その内部を紹介しましたが、今回は妓楼(女郎屋)の中に暮らす人々を紹介します。[insert_post id=70753][ins…
少女〜吉原を知り尽くす姐さんまで。吉原遊廓にいた花魁とその周りの女郎たち
前回は吉原遊廓で働く人々をご紹介しましたが、今回は花魁とその周りの女郎たちにフォーカスしてみましょう。[insert_post id=70896]花魁江戸時代後期以降の吉原遊廓では、最高級…
アイキャッチ画像、イラスト・加工、筆者
バックナンバー
- No.34「いけしゃあしゃあ」の語源は何?調べた結果をいけしゃあしゃあと紹介します
- No.33最終話【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第33話
- No.32【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第32話
- No.31【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第31話
- No.30【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第30話