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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第1話:3ページ目
男が煽ると、背後(うしろ)に集まっていた小さな禿たちは目を輝かせ、びろうどの帯をふりふり、
「姐さん、姐さん」
と口々に自分の姉女郎を呼んだ。彼女たちは幼くして既に男共に愛されるための術を備えているようで、その愛らしさに自然と男の頬も緩んだ。
しかし巾着のように緩んだくちもとは、すぐに緒締めで締め直されるが必定。禿たちが呼んだ途端、大向こうから縦縞の揃いに漆の木履(ぽっくり)の姉女郎たちが肩で風を切り飛んできて、目を吊り上げて凧売りに嚙みついた。
「兄さん!まアた今年もこんな場所でがき相手に凧なんざ売り付けて、廓内(なか)で飛ばす場所なんてありゃしないよ!」
「さあな、こんな美人(うっつく)に買ってもらえたら、この凧ア喜んで座敷のあっちイこっちイ飛回りまさア」
「あんた、ほんに馬鹿だねえ」
軽く目をむきながらも女たちはまんざらでもない様子だ。一人の若い女郎が、魯智深の凧を手放さない禿を指し、
「そんなら、この子が持ってるそれ一つ。幾らだっけ?」
「三百文」。
男が悪びれもせずにしれっと放ったその値に、女の顔が曇った。
(ちょいと高えわいな)
とは、江戸ッコ女郎は口が裂けても言わないが、ほんの一瞬まつげが揺れた。
普通の凧は一枚張りなら安ければ十六文、二枚張りでも四十八文ほどで買える。
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