朝ドラ【風、薫る】“観察する看護”でりんが見抜いた千佳子のSOS…「明治のナイチンゲール」誕生の兆し:3ページ目
露のように消える儚き命「御法 源氏物語」
患者さんが読んでいる本も、ときとして「『observe=観察する』こと」が大切。
千佳子が読んでいたのは『御法(みのり) 源氏物語』。りんは「素敵なものをお読みですね」と声をかけますが。実は、これは死を悟った女性が残された時間を慈しむような儚い内容です。
体が衰弱し、死期が近づいてきたことを悟った紫の上は、出家したいとかねて光君にも伝えるが、生きている間は離れたくはないと許してくれない。
ある秋の夕暮れ、少し気分がよくなり紫の上は脇息に寄りかかって風に当たり、庭で揺れる草花を眺めていた。身を起こしただけでも喜ぶ源氏。それを見て、“私が死んだら、どれほど苦しまれることか…”と悲しい気持ちになる。
「おくと見る ほどぞはかなき ともすれば 風にみだるる 萩のうわ露」
(萩の上の露が、見る間もないほどすぐに風に乱れてしまうように、今はこうして私が起きていても、もはやはかない命。すぐに消えてしまうでしょう)
と詠む紫の上。
「ややもせば 消えをあらそう 露の世に おくれ先立つ ほど経ずもがな」
(先を争って消えていく露のようにはかない世、先立って残される間をおかず、私も一緒に消えてしまいたいものです)
と返す源氏。まもなく気分が悪くなった紫の上は、源氏に退室するように願いとこに伏してしまう。そして、そのまま、露が消えてしまうように静かに息を引き取った。
紫の上に自分を投影し、残される夫や息子などとの別れを意識したのではないでしょうか。
