江戸時代の町民の税金ほぼゼロだった!?江戸幕府が“安定する社会”の為に作った経済システムとは:3ページ目
二重の救済システム
幕府の経済政策の真骨頂は、武士の借金をリセットする一方で、その借金の貸し手である商人をも救済した点にあります。
借金をただリセットしても、貸した側は大損であり踏み倒されたのと何ら変わりはありません。それを放置しては、金融市場が混乱して町が立ち行かなくなります。
そこで幕府は、借財帳消しのたびに札差と呼ばれる金融業者へ特別融資を行いました。商人側にも公的な手当てを行うことで、金融不安というリスクを回避したのです。
江戸時代の高利貸しの金融業者「札差」とは何者だったのか?その実態と没落
旗本・御家人専門の金融業者『鬼平犯科帳』の「決闘」では、のちに長谷川平蔵の密偵になるおまさが、盗人の引き込み役として札差の「大月」に住み込みで働いていました。この札差とは何かと言うと、幕臣…
この、いわば二重の救済によって、江戸の金融システムは破綻することなく二百年以上も維持されました。
江戸の町民は無税で謳歌し、商人は富を社会に還元し、武士は借金リセットで体面を保つ。これらはすべて、幕府が高度な計算のもとに経済のバランスを取り続けた結果でした。
江戸時代の税制度は、現代のような一律で厳格な徴税とは全く異なる哲学を持っていました。しかしその裏には、社会全体の安定を保つための、驚くほど精密な調整機能が存在していたのです。
江戸の平和は決して偶然や精神論だけで守られていたわけではなく、幕府の冷徹な知性とシステムこそがキモだったのです。
参考資料:
大村大次郎『脱税の日本史』宝島社、2024年
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