旅館にある“謎の窓際スペース”、その名は「広縁(ひろえん)」定番化されるに至った秘められた歴史:2ページ目
なぜ旅館の標準設備になったのか
広縁が旅館の定番設備として全国に広まった背景には、戦後の観光政策があります。
第二次世界大戦後、日本は復興と国際社会への復帰を目指し、訪日観光を重要な政策に位置づけました。その象徴が、1949年に成立した国際観光ホテル整備法です。
この法律は、外国人観光客や外交関係者にふさわしい宿泊施設を整えるために制定されました。
当時の状況を示す資料には、戦時中の荒廃に加えて、主要ホテルの多くが占領軍に接収され、観光地には自由営業のホテルがほとんど存在しなかったと記されています。
そこで政府は、一定の基準を満たす宿泊施設に税の軽減措置を設け、観光基盤の整備を進めました。
広縁が旅館に求められるようになったのは、1952年の法改正によります。
この改正で、旅館には「椅子とテーブルを備えた広縁」を設置することが基準として盛り込まれました。
洋室文化に慣れた外国人観光客の生活様式に合わせ、座る場所とテーブルを備えた空間が必要とされたためです。
広縁の幅や長さの基準まで示されていたことから、当時の政策がいかに外国人の利便性を重視していたかが分かります。
現在の法律に広縁の規定は残っていませんが、旅館文化の中で広縁は自然に受け継がれています。
