『べらぼう』本は総合芸術!壮大な夢噺のラスト飾る“屁”の大合唱!爆笑と号泣の賑やかな最期【後編】:6ページ目
「屁」の大合唱で蔦重を呼び戻す
ていの話に満足そうに頷きつつ、心臓を抑え意識を失う蔦重。「旦那様!」のていの声に皆がなだれ込んできました。部屋の外で控えていたのでしょう。
午の刻の鐘の音とともに、「みなさま、ありがたやまのかんがら…」の言葉とともに息を引き取る蔦重。
蔦重!と皆が口々に名前を呼びます。義理の親である駿河屋(高橋克実)、女将のふじ(飯島直子)も「重三郎!」「重三」と呼びつつ駆けつけます。
「親が別れもいわぬなど…呼び戻すぞ」と音頭を取るのはやはり太田南畝でした。
「へ!へ!へ!」チーム蔦重の「屁踊り」が始まります。
皆、一心に蔦重を見つめ「戻ってこい!」という思いを込めながらの「へ」の大合唱。
ていも、次郎兵衞兄さん(中村蒼)に、蔦重の体を預け「へ」に加わります。大声でへ!へ!と、部屋が揺るぎそうなほどの大合唱が続きました。
すると、こと切れたと思った蔦重がふと目を開けました。
「拍子木聞こえねえんだけど」
…一同「へ?」
カンカンという拍子木の音で終わり。
さすが「べらぼう」。見事に、全員がたわけた最期でした。
長い長い“夢噺”を ありがた山の鳶がらす
「べらぼう」は、“本”が、戯作者、絵師、彫り師、摺師、製本、本屋と多くの人々が携わって完成する総合芸術だということ。エンタメが持つ、人を元気にする力を教えてくれました。
そして蔦屋重三郎という稀有な発想力、企画力、行動力を持ち、人たらしの魅力を持つ人物や、さまざまな人物の魅力で楽しませてくれました。
ただ「史実」を辿るだけではなく、その史実に肉付けして血を通わせ、毎回「そう来たか!」と最期まで楽しませてくれた夢噺。
1年間にわたる、長い長い“夢噺”をありがた山の鳶がらすでした。

