男装も艶やかもこなすスーパーアイドル――戦国の巫女・出雲阿国が起こした「かぶき」の衝撃【前編】
「歌舞伎」という言葉から、多くの人は派手な衣装や隈取りを思い浮かべることでしょう。けれども、その始まりは意外にも、一人の女性が踊った奇抜な舞からでした。
その女性こそ「出雲阿国(いずものおくに)」と呼ばれた人物です。
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阿国は戦国から安土桃山時代にかけて現れました。出雲大社の巫女であったと伝えられる彼女は、もともと神に奉納する舞を踊っていました。しかし、時代は大きく動き、人々は戦乱に疲れながらも新しい娯楽を求めていました。
阿国はその空気を敏感にとらえ、伝統的な舞を超えた自由な表現を始めたのです。
「かぶく」とは何か
阿国が考案したのは「かぶき踊り」と呼ばれるものでした。「かぶく」とは「傾く」と書き、普通から外れて目立つことを意味します。町では派手な格好をした若者を「かぶき者」と呼んでいましたが、阿国はその流行を舞台に取り入れたのです。
彼女は男装して刀を振り回したり、遊女を真似て色気を漂わせたり、観客を驚かせるような演出を次々と試みました。ときには「ややこ踊り」と呼ばれる滑稽な踊りを披露することもありました。
こうした舞は、人々にとって初めて見るものばかりで、会場は常に熱狂に包まれたと伝えられています。
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