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男装も艶やかもこなすスーパーアイドル――戦国の巫女・出雲阿国が起こした「かぶき」の衝撃【前編】

男装も艶やかもこなすスーパーアイドル――戦国の巫女・出雲阿国が起こした「かぶき」の衝撃【前編】:2ページ目

女性が舞台に立つ衝撃

特筆すべきは、阿国が「女性」であったという点です。戦国末期から江戸初期にかけて、女性が公の場で芸を披露することは珍しく、時に批判の対象ともなりました。それにもかかわらず、阿国は堂々と舞台に立ち、自由な表現を貫きました。

読者の皆さんにとっても、その勇気ある姿勢は鮮烈に感じられるのではないでしょうか。

流行の拡大

阿国の「かぶき踊り」は瞬く間に広まりました。京都をはじめ各地で評判となり、観客が押し寄せる様子は記録にも残っています。彼女の舞台は単なる芸能ではなく、町人たちにとって大きな楽しみであり、時代の空気を象徴するものでした。

阿国の肖像や詳しい記録は多く残っていません。しかし絵巻や当時の記録から、彼女が圧倒的な人気を誇り、まさに時代のスターであったことは間違いありません。

ただし、流行が広がれば問題も生じます。阿国が生み出した「かぶき踊り」は、やがて風紀や秩序を乱すとして批判を浴びるようになりました。

次回は、禁止と弾圧を経て、それがいかに「歌舞伎」という伝統芸能へと変化していったのかを見ていきましょう。

【後編】の記事はこちらから↓

女性排除…それでも消えなかった歌舞伎――戦国の巫女・出雲阿国が起こした「かぶき」の衝撃【後編】

「歌舞伎」という言葉から、多くの人は派手な衣装や隈取りを思い浮かべることでしょう。けれども、その始まりは意外にも、一人の女性が踊った奇抜な舞からでした。その女性こそ「出雲阿国(いずものおくに)」と…

参考文献

  • 有吉佐和子『出雲の阿国』(1969 中央公論社)
  • 小笠原恭子『出雲のおくに―その時代と芸能』(1984 中公新書)
  • 服部幸雄『歌舞伎成立の研究』(1968 風間書房)
  • 吉川清『出雲の阿国』(1953 田中書房)
  • 河竹登志夫『歌舞伎』(2001 東京大学出版会)
 

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