なぜ中関白家と呼ぶ?「香炉峰の雪」の元ネタ、蔓延した疫病の実際…大河ドラマ「光る君へ」4月21日放送振り返り:2ページ目
名場面「香炉峰の雪」元ネタは?
定子から「香炉峰の雪はどうかしら?」と問われ、簾を上げて庭園の雪をご覧に入れた清少納言(ファーストサマーウイカ)。彼女の才知をいかんなく発揮した名場面の一つです。
実写にするとこんなもんかなと思わなくもありませんが、やはり生身の人間が演じてくれるのは感慨深く楽しめました。
このエピソードは彼女の随筆『枕草子』に残されており、多くの平安文学ファンに愛されています。
……雪いと高く降りたるを例ならず御格子まゐらせて、す櫃に火起して物語などして集まり侍ふに「少納言よ香爐峰の雪はいかならむ」と仰せられければ、御格子あげさせて、御簾高く卷き上げたれば、笑はせたまふ。……
※『枕草子』より
劇中でも言及されていた通り、このやりとりは白居易(白楽天)の漢詩「香炉峰下新たに山居(さんきょ)を卜(ぼく)し、草堂初めて成り、偶(たまたま)東壁に題す」が元ネタ。
「香炉峰に新居を建てた記念に、ふと思いついて詠む」といった意味になります。
日高睡足猶慵起
(あぁ、もう日が高いのに朝寝が気持ちよすぎてやめられない)
小閣重衾不怕寒
(狭いけれど落ち着く我が家、お布団を重ねているから寒くない)
遺愛寺鐘欹枕聽
(枕越しに聴こえるのは、遺愛寺の鐘。これだよ、これ)
香爐峰雪撥簾看
(簾を上げて、美しく積もった香炉峰の雪を眺める。素晴らしい!)
匡廬便是逃名地
(ここ匡盧では、出世とか名誉とかどうでもよくなる。負け惜しみじゃないよ!)
司馬仍爲送老官
(小さな官職にしがみつき、年老いてまであくせく働きたいとは思わないね)
心泰身寧是歸處
(何だかんだ理屈をこねても、結局のところ人生の楽しみって、心身の健康でしょ?)
故鄉何獨在長安
(長安の都ばっかりがいいところじゃない。そう思わないかい?)
※カッコ内は筆者によるかなり自由な意訳です。
まさに悠々自適の生活。多くの人が心の底で憧れる暮らしではないでしょうか。