関東軍が満州事変を起こした本当の目的は何だったのか?ソ連対策と「リストラ阻止」のための策謀:2ページ目
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「軍人リストラ回避」説
そしてもう一つ、満州事変の本当の狙いと考えられているのが、軍人のリストラを回避するためというものです。
第一次世界大戦後、世界は軍縮の流れに傾いており、日本も1930年にはロンドン海軍軍縮条約に署名しています。これは第一次世界大戦の戦勝国であるイギリス、アメリカ、フランス、イタリア、日本の海軍の軍事力の増強を制限する条約でした。
こうして、第一次世界大戦前には国家予算の半分を占めるほどだった軍事費は、軍縮条約締結後には4分の1にまで減ってしまったのです。
当時、日本の政治では民政党と政友会の多少の摩擦はあったものの、いずれの政党も軍縮には賛成していました。すると、軍縮で割を食うことになるのは軍人です。
軍事費が削られるということは、軍備を強化できないどころか軍人も雇えなくなってしまいます。つまりリストラされてしまう軍人が出てくるのです。
これを回避するために現場の軍人たち――ここでは満州に駐屯していた関東軍――が、半ば強行的に行動を起こしたのが満州事変だったのでした。
参考資料
井上寿一『教養としての「昭和史」集中講義』SB新書、2016年
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