「鎌倉殿の13人」ついに始まる!源頼家の暴走…第28回放送「名刀の主」予習:4ページ目
「先だって安達(景盛)殿に讒訴したのもあの梶原と言うではないか。このまま放置しておけば、罪なき命が奪われ続けることになる!」
そこで和田義盛(演:横田栄司)や安達盛長に相談して景時の弾劾状を作成。かねて怨みを持っていた者たちの署名を募ったところ、書きも書いたり66名。
そこには千葉介常胤(演:岡本信人)、三浦介義澄(演:佐藤B作)、畠山重忠(演:中川大志)、足立遠元(演:大野泰広)、比企能員(演:佐藤二朗)など錚々たるメンバーが名を連ねました。
他にも小山朝政(演:中村敦)、佐々木盛綱(演:増田和也)、稲毛重成(演:村上誠基)、そして頼朝襲撃の疑いで出家させられていた岡崎義実(演:たかお鷹)の名前も。よほど景時が怨みを買っていたことが判ります。
「これを鎌倉殿へご奏上願いたい!」
弾劾状は大江広元(演:栗原英雄)を経由して頼家に提出されました(広元は景時を失うことを惜しんで渋ったものの、ついには押し切られてしまいました)。
「……との事だ。どうする平三」
頼家は景時に弾劾状を見せて「言い分があれば弁解するか、訴えの事実を全面的に受け入れて謝罪しろ」と伝えます。その無責任さに、景時は言葉を失ったことでしょう。
確かにこれまで、頼朝時代を含め多くの御家人たちを讒訴によって粛清へ追い込んできたのは事実です。
しかしそれはいずれも鎌倉殿の内意を受けてのことであり、讒訴によって御家人たちの忠誠を試し、時に掣肘を加えるのが景時の任務でした。
頼朝はそれによって御家人同士のパワーバランスを調整。例えば上総介広常(演:佐藤浩市)や一条忠頼(演:前原滉)、そして源義経(演:菅田将暉)など突出した者を「均す」ことで御家人たちを横一線に並べたのです。
先の安達景盛の件は、いささか無理筋が過ぎたかも知れません。そして今回の結城朝光についても、予想外の反撃が待っていました。
それでも鎌倉殿はいざとなればケツを持ってくれると信じたからこそ、今まで汚れ仕事にも手を染め続けたのです。
にもかかわらず頼家は、利用するだけしておいて、いざ御家人たちから反発を受ければ「俺知らね。お前のせいだからな」と丸投げしてしまいます。
「刀は切り手によって名刀にもなれば、なまくらにもなる」
かつて景時は、そんなことを語っていました。結局、頼家には景時という名刀を扱いきれず、また景時自身も頼家が持ったことで「なまくら」になってしまったのでしょう。
(大殿ならば、こうはなされぬ……いや、愚痴であろうぞ)
景時はやり切れぬ怒りを吞み込み、一切の弁解も謝罪もせず、鎌倉を去って所領のある相模国一宮(現:神奈川県寒川町)へ引きこもったということです。
終わりに
その後、景時は一度こそ鎌倉への復帰を果たすものの、今度は鎌倉から追放されてしまいます。
12月9日 鎌倉へ帰参
12月18日 評議の結果、景時の追放が決定。和田義盛と三浦義村によってその館は破壊され、その跡地と材木は永福寺に寄付された。
※『吾妻鏡』より要約
そして正治2年(1200年)1月20日、梶原一族は「謀反の疑い」によりことごとく滅ぼされてしまったのでした。
「それがしは頼りにされている」
「頼りにされているのと、利用されるのは違います」
かつて畠山重忠が景時にそんなことを言っていましたが、まさにさんざん利用された挙げ句切り捨てられた景時に、同情を禁じえません。
果たして大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では景時の最期がどのように描かれ、アレンジされていくのか。心して見届けたいと思います。
※参考文献:
- 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 後編』NHK出版、2022年6月
- 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 続・完全読本』産経新聞出版、2022年5月