「鎌倉殿の13人」北条と比企の対立、謀叛に利用される曽我兄弟の仇討ち…第22回「義時の生きる道」振り返り:4ページ目
曽我兄弟の仇討ち、時政は勧めていたけど……
かつて工藤祐経(演:坪倉由幸)に石を投げていた二人の少年、彼らは元服して曽我十郎祐成(演:田邊和也)、曽我五郎時致(演:田中俊介)と改名。
祐経に殺された父・河津祐泰(演:山口祥行)の仇討ちを打ち明けられ、大いに賛同していた時政とりく(演:宮沢りえ)でしたが、こういう場合ってどうなんでしょう。
父の仇討ち時代は親孝行として賞賛されたかも知れませんが、頼朝のお気に入りである祐経を許しなく討つのは悪手ではないでしょうか。
これが頼朝亡き後に御家人同士が殺し合いを始めた混沌の時代ならともかく、頼朝が健在である前提なら、許可なき仇討ちは間違いなく謀叛に当たります。
頼朝まで討つ気でいるとか否は関係なく、曽我兄弟が仇討ちを決行した後、五郎の烏帽子親である時政も無事(知らなかった)ではすみません。
『曽我物語』では母親が仇討ちを諦めるよう諭しており、時政もこの場面に接したら(仇討ちを知っていたら)少なくとも頼朝に祐経の非道≒仇討ちの許可を訴え出るワンクッションはおくのではないでしょうか。
とにかく殺っちまえ、後は野となれ山となれ……という態度は、鎌倉武士団の中枢に位置する北条氏の棟梁にあるまじき軽挙。
物語としては面白くなるのでしょうが、比企につけいる隙を与え、仇討ち≒謀叛を未然に阻止するチャンスを逸してしまったようです。
富士の巻狩り、そして仇討ち……第23回放送「狩りと獲物」
先週からの八重ロスに苦しむ視聴者たちの箸休め的なホームドラマ展開が多めだった第22回。
次週は金剛が元服して北条頼時(演:坂口健太郎。泰時)となり、万寿も元服して源頼家(演:金子大地)に。少しずつ、世代交代が始まりつつあるのを感じます。
雄大な富士の裾野を舞台に繰り広げられる狩猟の描写、そして曽我兄弟の仇討ちはどのようなアレンジが加えられるのでしょうか。
ただ「十郎は討死、五郎は生け捕られて処刑」ではないでしょう。次回予告から頼朝の死(誤報)が告げられ、鎌倉が大混乱に陥ることは想像に難くありません。
そして動揺する政子たちを「鎌倉はそれがしがお守りします」と励ました範頼に謀叛の容疑がかかる……これまで好感度が高まり続けてきただけに、心配ですね。
果たして頼朝の運命やいかに……コラそこ「やっちまえ」とか言わない!
日本三大仇討ちの一つ「曽我兄弟の仇討ち」父の復讐に生きた兄弟の結末は…【鎌倉殿の13人】
※参考文献:
- 伊藤邦彦『「建久四年曾我事件」と初期鎌倉幕府 曾我物語は何を伝えようとしたか』岩田書院、2018年7月
- 坂井孝一『物語の舞台を歩く 曽我物語』山川出版社、2005年2月
- 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 後編』NHK出版、2022年6月