どんな美女にもまさる姫君!「源氏物語」ヒロインで極度のコミュ障・末摘花の恋愛エピソード【完】:3ページ目
「……深き蓬のもとの心を」姫君の一途さに感激する光源氏
「……あら……わたくし、もう死んだのね……?」
末摘花の姫君は、目の前の光景をそう理解しました。それもその筈、姫君の前に、来る筈もない光源氏が立っていたのですから。
「これは幻……でも、嬉しい。我が愛しき背の君の姿を、こうして映しだして下さったのですもの……神様仏様……本当にありがとう存じます……」
「あ、あの……」
一人合点している末摘花の姫君に、光源氏は少し困惑しています。
(……まさか、本当にこんな恐ろしい荒れ屋敷に、独りぼっちで私を待ち続けていたとは……)
本当はたまたま近くを通りがかっただけなのですが「あの不器用だけど一途な姫君なら、今も私を待ち続けているかも知れない」と、確かめに入ってみたのでした。
尋ねても我こそとはめ道もなく深き蓬のもとの心を
【意訳】道なき道を訪ねて行こう。蓬(よもぎ)の生い茂る=荒れ果てた屋敷の中で、ずっと私を待ち続けてくれた彼女の心を
以前、光源氏が謀叛の疑いをかけられた時、彼と親しくしていた多くの貴族や女性たちが一斉に掌を返し、光源氏は村八分状態にされてしまいました。
そんな苦い経験があるからこそ、ずっと変わらなかった(であろう)末摘花の姫君を、ずっと気にかけていたのです。