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腹切るくらい安いもの…山本権兵衛の政治使命と「臥薪嘗胆」エピソードを紹介

腹切るくらい安いもの…山本権兵衛の政治使命と「臥薪嘗胆」エピソードを紹介

「三国干渉」と「臥薪嘗胆」

……時は明治二十八1895年、アヘン戦争で敗れたとは言え、なお「眠れる獅子」と恐れられたアジアの巨大帝国・清(しん)との戦い(日清戦争)に勝利した日本は、多大な犠牲と戦費の賠償として、清国から遼東半島を割譲してもらいました。

ここを押さえられれば、李氏朝鮮の独立&近代化を支援しやすい上に、李氏朝鮮を支配下に置き続けたい清国に対する牽制も可能です。

しかし、日本の大陸進出が気に入らないロシア・フランス・ドイツの3か国が「極東アジアの平和が脅かされる」として日本に圧力をかけ、遼東半島を清国に返還させます(三国干渉)。

それだけでも悔しいのに、今度はロシアが「ちょっと半永久的に借りておくだけだぞ」と遼東半島を清国から強引に租借(そしゃく:土地をリースする名目で実質的に植民地化)してしまいます。

要するに「本当は自分のものにしたかったから、大義名分(きれいごと)をたてに言いがかりをつけた」のですが、そんな露骨な嫌がらせを受けても、日清戦争で疲れ切っていた日本には、それに報復する(そもそもそんな事をさせない)だけの力がなかったのです。

当時(19世紀末)は弱肉強食の帝国主義が世界中に蔓延しており、力がないまま下手に戦争を起こせば、たちまち滅ぼされてしまうのが国際常識でした。

かと言って、大国のご機嫌とりばかりしていれば、アジアやアフリカ、ラテンアメリカ諸国のような搾取と弾圧の未来が待つばかり。

死にたくはないし、奴隷にもなりたくない……それなら力を蓄えて国の平和と独立を守るよりありません。話し合いをしようにも、力無き者の理想論など、誰も聞いてはくれないのですから。

かくして日本国民は「臥薪嘗胆(がしんしょうたん※)」をスローガンに、コツコツと国力を蓄えていくのですが、海軍では「六六艦隊計画(ろくろくかんたいけいかく)」が進められることになるのでした。

(※)がしんしょうたん:「薪(たきぎ)に臥(ふ)し、胆(きも)を嘗(な)める」と読み、自らを痛めつけることで悔しさを忘れず、ついに志を遂げたエピソードから、ここでは「いつか必ずロシアに勝つ!」という日本国民の合言葉となりました。

3ページ目 「おいとおはんで、腹ァ切り申(も)そ」

 

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