叱られてる内が華?「武士の世」を目指した源頼朝の意識改革と、違反した御家人への悪口雑言を一挙公開:6ページ目
共に「武士の世」が描けるか?
……しかし、空恐ろしいのは、これだけ御家人みんなに罵声を浴びせていながら、勝手に官位を受けた筆頭格である筈の義経に対する批判は元より、その名前すら書いていない事です。
これを「さすがの頼朝公も、弟には若干なりとも遠慮があった」と見るか、あるいは「もはや罵声すらかけない≒もう見棄てるつもりでいた」と解釈するかは微妙なところです(たぶん後者でしょう)。
少なくとも、他の御家人たちに対する罵声は「お前らしっかりしろ!目を覚ませ!」という叱咤激励でもあり、よく「叱られている内が華」と言いますが、まさしくそれを感じます。
※実際、この時に罵倒された御家人たちは、後で何だかんだ言って赦されています。
義経は、頼朝公の思い描く「武士の世」が理解できず、あくまでも武士は「朝廷≒公家に仕えるべき存在(地下人)」と考え、そうした価値観の相違が兄弟の訣別を招き、やがて悲劇を生み出したのかも知れません。
※参考文献:『全譯 吾妻鏡 第一巻』新人物往来社、昭和54年8月20日 第四刷