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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第27話

【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第27話

 

「あのね」、

 

しばらく二人きりでしたたかに戯れた後、服の乱れを整えたみつが照れくさそうに切り出した。

 

「九郎助稲荷の近くで、江戸町の見世のお職上がりの姐(ああ)やんがあんころ餅屋をやってるんだけど」、

 

「へえ、知らねえなア」

 

国芳は顎に指を当てた。

 

「その見世はね、姐やんが長年約束した間夫と年季明けに夫婦になって、旦那と二人でやっていて、それで、・・・・・・」

 

みつの言葉は段々尻すぼみになって、消え入るようだった。

俯くと、睫毛の長さが際立つ。

国芳はそのいぢらしい姿に思わず喉の奥で笑い、

 

「・・・・・・行くか」、

 

男らしい手で、みつの白い手を取った。

 

「あやかりに、な!」

 

顔をあげたみつの瞳が、星を湛えた七夕の夜の天の川のようにきらきらと輝いた。

 

 

 

 

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