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万単位で取り引きされた初鰹
俳句のように、青葉を見てホトトギスの声を聞くのは無料ですが、初鰹はタダではいただけません。素堂の句を皮肉るように「目と耳は ただだが 口は銭がいり」と言う句が読まれ、『柳多留』に収録されています。
その価格も人気を象徴して高額であり、文化9(1812)年3月25日に中村歌右衛門と言う歌舞伎役者が3両で買ったという逸話も残されています。江戸後期の1両を5万円ほどだと換算すれば、15万円もの大金を鰹に積んだのだから驚きです。当時のアイドルだった役者までもが大枚をつぎ込んだ初鰹には、庶民も熱を上げてしまうのは言わずもがなで、なけなしのお金をはたきました。
また、カツオが「勝つ男」と通じることから、縁起物であると喜ばれて武士にも人気がありました。
女性の皆さんに怒られそうですが、当時の初鰹の人気ぶりは「女房を質に入れても食べる値打ちがある」というジョークまでもが生まれるほどでした。それほどまでに初鰹はありがたがられ、幅広い層の人びとにに好まれた食品だったのです。
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