ぱっと見は、朽ちかけてる板切れにしか見えませんが、実はこれ、大発見なんです。
鳥取県を走る一般国道9号の改築工事に伴って、平成25年度から27年度にかけて「青谷横木遺跡(あおやよこぎいせき)」で行われた調査で見つかった古代の官道「山陰道」の盛り土の中に、女子群像を描いた板が含まれていたことがわかりました。それがこの板。長さは約70cm、幅15.5cm、厚さは6mm。
女子群像でよく知られているのは国宝「高松塚古墳壁画」ですが、他には朝鮮半島の水山里古墳壁画に描かれているのみで、女子がまとまって描かれていることは、世界的にも稀なんだそうです。今回の発見は、古代の中央と地方、海外文化との関係を知る上での貴重な手がかりとなる出土品なのです。
今回出土した板絵は、高松塚古墳壁画とほぼ同じ時期の7世紀末〜8世紀初頭に描かれたものとみられています。少なくとも6名の人物が描かれており、右から左へ列を作って歩みを進めている様子が見られます。
一番右側の人物は払子(ほっす)のようなものを持っていることがわかります。現時点では、肉眼観察での彩色は確認できないそうですが、今後、墨書き以外に顔料で色付けが施されていたのか詳しい調査がなされるとのこと。
人物群像は、中国や朝鮮半島の墓室に描かれる画題。この板絵は、渡来文化に縁のある人物の葬祭に関わるものかもしれません。飛鳥時代の鳥取で、朝鮮半島などの海外との交流があった可能性を裏付ける絵画資料としても価値のある発見です。
板の上部には5mmほどの穴が開けられていますが、何のために作られたのかはわかっていません。古墳の石室に飾られていたものなのか、壁画の下絵のデザイン画として使われていたのか、いろいろな可能性が考えられるとのこと。歴史ロマンがあふれます。
2016年12月17日には鳥取県埋蔵文化財センターで、この板絵の特別公開が行われます。謎がいっぱいの新発見を間近に見られる好機をお見逃しなく。