【ブラッサム】秋山格之介(高良健吾)のモデルは芥川龍之介!史実では宇野千代が短編小説のモデルに:3ページ目
デート中「安い!と葱を買う千代から生まれた短編『葱』
芥川龍之介の短編『葱』とは、神保町にあるカフェの女給・お君さんが主人公。色白で眼が涼しい美人で、白いエプロン姿は竹久夢二の画中の人物が抜け出したようだと書いています。
そのお君さんは、女髪結の2階に間借りしている生活で、机にさまざまな書籍があるが、「残念ながらおれの小説などは一冊も見当たらない」。この一文は、芥川の心情を表しているような。
お君さんは、洒落た服装の無名の芸術家・田中君に恋します。
二人はサーカスを見に行くことになりますが、いざ待ち合わせると「サーカスは昨日で終わりだった。今日は自分の知る家に行き食事をしよう」と誘う田中君。
そっと手をつないだ二人は店まで歩きました。お君さんは今夜への期待や不安なのか、散歩の途中に目に入るものすべてがキラキラ見えていたようです。
ところが。
お君さんは、八百屋の店頭に「一束四銭」の札が付いた安い葱に眼が釘付けに。田中くんを1人残し駆け寄り葱を2束買いました。
田中君の脳裏からは、これから彼女を連れていく店の姿は消えていき、目の前に葱が浮びツ〜ンとした匂いまでしてきたよう。
「御待ち遠さま。」
憐むべき田中君は、世にも情無なさけない眼つきをして、まるで別人でも見るように、じろじろお君さんの顔を眺めた。(芥川龍之介「葱」)
今宵はロマンティックな逢瀬になるはずが、お君さんが葱を買う行為で、思い切り生活感に満ちた日常に引き戻されたのでした。「100年の恋も醒めた」ということなのでしょうか。
ちょっと、田中君には悪いけれどクスッとなって、お君さんには「わかる!わかる!」と言いたくなってしまう話です。
これが、甘やかな香りを放つ桃などの果物だったらこうはならなかったかも。
お君さんのモデルは宇野千代、田中くんのモデルは今東光……とすると。
千代の所帯染みた一面を知ってがっかりしたのは仲良しの東光ではなく、店内での美しい姿しか知らなかった(そして密かに憧れていた?)芥川のほうだったのかも?
そんな風に思えるような、小説でした。
