「べらぼう」瀬川が登場!写楽=斎藤十郎兵衛説 採用、蔦重が遺したもの…最終回の内容を解説:3ページ目
二人で見つめる彼女の背中
長谷川平蔵(中村隼人)に呼ばれ、蔦重はとある駕籠屋の前へやって来ました。
行ってみると駕籠かき(人夫)たちがみんな本を読んでおり、そこの女将は子に恵まれ、幸せにしていると言います。
その後ろ姿は、平蔵と蔦重が本気で惚れた瀬川改め瀬以(小芝風花)でした。駕籠かきたちと楽しく軽口を叩き合っている姿を見て、二人は涙ぐみながら立ち去ったのでしょう。
かつて二十年かけて自分の思いに気づき、紆余曲折の末に一度は一緒になりながら、蔦重を思って姿を消してしまった瀬以。彼女が元気で幸せなら、もう何も言うことはありません。
何も言わずに幸せを願い、初恋に別れを告げたのでした。
【べらぼう】最終回に瀬川(小芝風花)登場!?史実での瀬川と鳥山検校のその後と視聴者の声
吉原問題の解決策「新吉原御定書」
さて、平蔵が蔦重を呼んだ目的は、別に元カノ観賞会だけではありません。
岡場所に警動が入り、摘発された遊女たちが吉原遊郭へ押し込まれ、より一層無秩序化してしまうことへの警告でした。
「より一層厳しくなろうが、時には蓮の花が咲く泥沼であってほしい」
そんな平蔵の願いを実現するため、また故郷の吉原を守るため、蔦重たちは「新吉原町定書」を作ります。
第1回放送「ありがた山の寒がらす」からずっと、吉原のためを思いながら駆け抜けてきた蔦重にとって、生涯の集大成と言えるでしょう。
81ヶ条の定書によって遊女や芸者たちの扱いが(ある程度は)守られ、吉原遊郭も後世まで命脈を保つこととなるのでした。
最期まで書を以て……
かくして吉原は守られ、本業の方も大忙し……まさに順風満帆となりつつあった蔦重ですが、歌会の席で脚気に倒れてしまいます。
当時は脚気の死亡率が高く、江戸患いと呼ばれるように、江戸から離れると治るとも言われました。もちろんこれは食事から摂る栄養バランスの問題です。
必死に養生を勧めるおていさんですが、蔦重は自分の死さえも商売のネタにしようと譲りません。
最期まで「書を以て世を耕す」ことを諦めなかった蔦重は、絵師や戯作者を総動員してありったけの作品を世に送り出そうと奮闘しました。
山東京伝(古川雄大)・北尾重政(橋本淳)・大田南畝(桐谷健太)・勝川春朗(くっきー!)・朋誠堂喜三二(尾美としのり)……そして歌麿。
金太郎を慈しむ山姥の姿絵を見せ、続きが見たいと言う蔦重に「じゃあ、死ぬな」と笑いかけ、肩を叩く歌麿。「また来る」と言って障子を閉めた後、一瞬立ち止まった胸中は察するに余りあるものです。
わだかまりは解けても、やはり想いはくすぶり続けていたのかも知れませんね。


