『べらぼう』史上最高の“萌えキャラ”松平定信(井上祐貴)──ツンデレなオタク全開!10の魅力【前編】:3ページ目
揶揄をそのまま「褒められた!」と大喜び
定信による寛政の改革の出版・思想の統制により、蔦重と親しかったクリエーターたちもトーンダウン。
蔦重は、平賀源内(安田顕)に教えられた「我が心のままに生きる」を貫くため、誰もが自由に心のままに生きれる田沼の世を守りたいと決意。
仲間の絵師、狂歌師、戯作者たちを集めて松平定信の政策を批判し、「俺はこの流れに書を以て抗いてえ。皆様、力をお貸しくだせえ」と頼みました。
そして、「松平アゲで田沼サゲに見せかけ、実は松平の政をからかう」内容の黄表紙3作を発行します。ところが、この大作戦、定信には皮肉は通用しません。“自分が褒められている”と大喜びしてしまいます。
朋誠堂喜三二(尾美としのり)作『文武二道万石通』を読み、登場人物・畠山重忠の着物に梅鉢の紋があしらわれていることに着目。
「これは久松松平家の家紋の星梅鉢!つまりこれは私のことだ!」と勘違い。満面の笑みで、「喜三二の神がわたくしをうがってくださったのか!」と、大興奮して喜びます。
さらに、物語の中で、田沼一派の武士が、頼朝に見立てた将軍家斉に「文とも武っとも言ってみろ!」と説教される場面のセリフを声に出して、大はしゃぎ。「何とありがたきことだ!」と心から喜んでいる姿は、無邪気でかわいかったですね。
けれど、子供時代から定信に寄り添っていた家臣の水野は冷静です。たぶん、こういう突っ走ってしまう定信の性格をよくわかっていたのでしょう。
「しかし…取りようによっては、殿が心血を注いでやっている政をバカにしておるとは言えませぬか」と。その通り、水野殿、大正解なのですが。
前のめりになった定信は、“わかっちゃいないなあ〜これだから水野は〜!”な感じで、「黄表紙なのだから、面白くせねばなるまい!肝要なのは蔦重大明神がそれがしを励ましてくれておるということ!」と前のめりに。
間髪入れず九郎狐の「違います」のナレーションが手厳しい。
さらに定信、「大明神は、私がぬらくら武士どもを鍛え直し、田沼病に冒された世を見事立て直すことをお望みだ!」
「ものすごく違います」さらに間髪入れず九郎狐。
そして、「天明八年戊申、私はいっそう励まねばならぬ!」と間違った気合いを入れる定信。“好き”な気持ちが勝ると、こんなにも物事をポジティブに受け取れるものなのだなと、微笑ましく感じる場面でもありました。
けれど、蔦重の企みをこんなに喜ぶ定信をみていると、かわいい反面、こんなに簡単に騙されてしまうようでは大丈夫だろうかと心配になってしまうのでした。
【後編】に続きます。

