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『べらぼう』胸熱な「そうきたか!」源内生存説で笑顔が戻った蔦重夫婦に対し、闇堕ちの歌麿…【前編】

『べらぼう』胸熱な「そうきたか!」源内生存説で笑顔が戻った蔦重夫婦に対し、闇堕ちの歌麿…【前編】

「大河べらぼう」第44回『空飛ぶ源内』。残すところ4回になった今、ファンの心を鷲掴みにする、まさかの胸熱な「そうきたか!」展開となりました。

※前回放送の解説記事↓

「べらぼう」平賀源内を探し回る蔦重、満たされない歌麿…11月16日放送回の振り返り

喜多川歌麿(染谷将太)との決別を機に、盟友たちから見捨てられてしまった?蔦重(横浜流星)。失意の中にやって来た渡世人風の重田貞一(井上芳雄)が担いでいたのは相良凧。かつて獄中で死なず、生き延び…

このドラマ、“べらぼう”なのは主人公の蔦屋重三郎(横浜流星)ではなくて、実は脚本の森下佳子さんだったのか……と思わされる内容でしたね。この1年間、「べらぼう」を観てきた視聴者にとっては、“ご馳走が詰まったおせちの重箱”のような回だったと思います。

浮上した平賀源内(安田顕)生存説、笑顔が戻った蔦重夫婦、 “おっかさん”の優しさ、“もう一度会いたいあの人たちが”ゾクゾク登場、闇堕ちした歌麿、傀儡師アベンジャーズの爆誕……このドラマらしい笑いあり、ミステリー展開ありの盛りだくさんだった『空飛ぶ源内』。

蔦重夫婦と支えた人々、荒んだ歌麿に注目した【前編】、源内が結んだ“縁”が生んだアベンジャーズとまさかの“写楽チームの誕生【後編】に分けて、考察したいと思います。

“おっかさん”が教えてくれる「生きることは食べること」

流産後、食べる気力を失いやつれていくてい(橋本愛)。そんな時、耕書堂に蔦重のもう一人の“おっかさん”・ふじ(飯島直子)らが、いろいろなお菓子を詰め合わせた箱を持参して訪れました。

小さなお菓子箱を「子供はお菓子が好きだから」と仏前にお供えしてから、余計なことは言わず、大きなお菓子箱を開き、「さ、みんなで食べよ」という自然に誘います。ていさんも、小声で「私も…」と言います。「ん。」と微笑み、紙の上に菓子を置き差し出すふじ。

今までの中で、一番優しくて全てを包み込むような、“おっかさん”の「ん。」

その「ん。」と口の中に広がる甘さで、涙ながらに菓子を噛みしめるていの気張っていた心がほどけていくのが伝わってきました。泣けてよかった、食べられてよかったと、観ている方が救われた気持ちになりました。

今でこそ、甘いものは脳にとって即効性のあるご褒美といわれていますが、この当時は科学的な証明などなかったでしょう。ふじさん、妓楼でよくお菓子を食べていましたね。務める女郎たちの悲しい・切ない・理不尽な出来事をたくさん現場で見てきたふじだからこそ、甘いものが心を慰め癒してくれると体感して知っていたのでしょう。

この場面、歌麿が(染谷将太)家の縁側で、“おっかさん” ・つよ(高岡早紀)の握ったおにぎりにそっと手をのばして食べていたのを思い出します。

どんなに悲しみや絶望に支配されても、生きていかなければならない。そして「生きることは食べること」とばかりに、 “おっかさん”がそっと差し出してくれるおにぎりやお菓子。

つよとふじの二人の“おっかさん”の優しさが、子の凍った心をじわっと温めて癒す、歌麿とていが、 “対”になっていると感じさせた場面でした。

鬼展開で知られる森下脚本ですが、 こんなさりげない場面を丁寧に描くところも魅力ですね。

2ページ目 蔦重夫婦に“希望”をくれた『空飛ぶ源内』

 

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