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『べらぼう』蔦重と歌麿。二人の“息子”を大きな愛情で包んで抱きしめる、無敵の「おっかさん」【後編】

『べらぼう』蔦重と歌麿。二人の“息子”を大きな愛情で包んで抱きしめる、無敵の「おっかさん」【後編】:4ページ目

初めて蔦重が口に出した「おっかさん」という言葉

このつよのセリフは胸に響いたのでしょう。なかなか言いづらいのか、ちょっと戸惑いながらも「んじゃ、行ってくらあ。⋯お⋯おっかさん」と、初めておっかさんと呼びました。つよはずっと、蔦重のことを「旦那様」と呼んでいましたが、「おっかさん」と言った蔦重に、こちらも初めて「頼んだよ、重三郎」と返します。

お互い初めての「おっかさん」「重三郎」の短いセリフのやりとりには、万感の思いがこもっていました。

つよに「柯理」と呼ばれた時、蔦重の顔が一気にちょっと子供な表情に変化したのも非常に印象的でした。横浜流星さん旨いですね。蔦重も歌麿も、つよの前ではただの「おっかさんの息子」になる絶妙なシーンが印象的な回だったと思います。

ちなみに、歌麿が描いた大首絵の美人画は、蔦重が『雲母摺』を施し全体にキラキラ光った美しい仕上がりになりました。

きれいだなという歌麿に、“さらに灯で輝きが変化する”ことを、暗い部屋でろうそくを使い実際に見せる蔦重。その時、思わず蔦重は感動する歌麿の肩に手をかけるのですが、以前のように「スキンシップはやめてくれ」と拒否しませんでした。

つよに胸のうちを打ち明けたことで、蔦重のことを自然に受け止めることができるようになったのでしょうか。「おっかさん」の存在が、歌麿の心を安定させ「作品」だけに集中できるようになったのかな、と感じました。

歌麿にとって、大切な存在となったつよ。いつまでも、ずっと元気で側にいて、この兄弟を見守って欲しい……という、願いを込めつつ、残り少なくなってきた「べらぼう」を最後までしっかりと見守っていきたいと思います。

 

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