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『べらぼう』蔦重と歌麿。二人の“息子”を大きな愛情で包んで抱きしめる、無敵の「おっかさん」【後編】

『べらぼう』蔦重と歌麿。二人の“息子”を大きな愛情で包んで抱きしめる、無敵の「おっかさん」【後編】

大河「べらぼう」第41話『歌麿美人大首絵』では特にきわだった名セリフがいくつかあり、視聴者の心を掴んだり涙を誘ったりするものがありました。

たとえば、蔦重を昔からずっと支え続けてきた須原屋市兵衛(里見浩太朗)の、本屋の矜持を感じる名セリフ。

本屋っていうのはな 正しい世の中のためにいい事を知らせてやるっていう務めがあるんだよ。」

そして、「お前は男色か?」と聞かれた時の、歌麿のシンプルで誠実な名セリフ。

「俺はそもそも男か女かで人を分けたりしねえんだよ。俺は“好きな人”と“それ以外”で分けてるもんでさ。」

【前編】では、SNSでも大きな話題となったこの二つを考察しました。

『べらぼう』神対応と称賛の声!男色か?の問いに「好きな人とそれ以外」心に沁みる歌麿の答え【前編】

俺はそもそも男か女かで人を分けたりしねえんだよ。「好きな人」と「それ以外」で分けてるもんでさ。大河「べらぼう」第41話『歌麿美人大首絵』。[insert_post id=26021…

【後編】では、今回は「この人ありき」の主役だった蔦重の母、つよ(高岡早紀)と、“二人の息子”の万感の思いがこもった「おっかさん」のひとことを振り返ってみました。

歌麿の変化を見つめしっかり寄り添う「おっかさん」の愛情

耕書堂で手代として働く滝沢瑣吉(滝沢馬琴/津田健次郎)の、「お主は男色か?」の問いに動じることもなく「俺は“好きな人”と“それ以外”で分けてるもんでさ。」と返したこの歌麿のセリフは、知性が感じられ、率直で人の心を打つ言葉でした。

けれども、つよは“内心歌麿は傷ついたのでは?”と心配し、歌麿を訪ねます。

歌麿が暮らす家は、もとは鳥山石燕(片岡鶴太郎)の家。庭に咲く様々な植物、丸窓、絵の道具、襖に描かれた植物の絵……。明るい陽光に包まれた庭と縁側の“光”の部分と、暗い部屋の中の“影”のコントラストが強く、まるで額に収まった一幅の絵のように美しい構図が印象的です。

縁側で黙々と握り飯をほおばる歌麿を、返答がうまかったよと褒めながらも「それでいいのかい」と言います。微笑んでいた歌麿の表情が変わったのは「気がついていたんだな」と思ったからでしょうか。

「このままじゃあの子(蔦重)は一生、これっぽちもあんたの気持ちに気付かない。あんたはそれでいいのか」と、非常にストレートに率直に歌麿に問いかけます。

2ページ目 胸に秘めた蔦重への感情を、唯一話せる存在・つよ

 

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