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大河『べらぼう』の浮世絵に撮影協力している「アダチ版画研究所」とは?浮世絵のあれこれも聞いてみた

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紙を見れば売れ筋がわかる!?小ネタがざくざく

実際に刷る前の準備は?

紙は刷る前に湿らせておく。ちょうどよく湿らしておく加減を掴むには三年かかる。刷る色の順番に決まりはない。

江戸時代の初刷りはいい紙を使うが、人気作品になると地元産の粗悪品を使うようになる。なので粗悪品の紙を使った浮世絵ほど、当時売れた作品だということがわかる。

水で版木を湿らし、刷毛で伸ばし、水を含ませた筆で絵の具をつけて版木に載せ、別の刷毛でまた伸ばす。

グラデーションはどうやってつける?

馬のしっぽの毛を束ね、サメの皮で毛先を割り枝毛状にした刷毛を使っている。その刷毛に絵の具をつける按配で、色が決まります。刷毛自体に色がグラデーションとして定着するまで、何枚もためし塗りをするそうです。7、8回刷らないと、顔料と同じように発色しないそうです。

パレットで混色するのではなく、版木の上でグラデーションを作るんですよね。
拝見すると、刷毛の上から中腹にかけ薄くするなど、職人技としかいいようがありませんでした。

刷り上がった物を触らせてくれましたが、色を乗せるという感覚ではなく、紙に対して「色を染める」という感覚を受けました。顔料は全く手に付きませんでした。

広重と北斎の作品の違い

広重は効果的な赤の使い方をする。北斎はピンポイントの赤の使い方はしない。広重はグラデーションを多用する技巧派、北斎はは多用せず、構図も色もかっちりと決める傾向にある。ちなみに彫り師を指名できたのは葛飾北斎だけと言われているそうです。

墨版以外の色版の彫り方の手順をまとめると

①まずは下絵を貼り付け、墨版(絵の輪郭となる部分)を彫る
②墨版を色版の版木分だけ刷る
③刷った墨版の紙を版木に貼り付け、出したい色の部分だけ凸にして残す
④③を繰り返す

昔は下絵は墨版に貼り付けてその上から彫ってしまうので、手元に残りにくい。それを考えると、現在残されている江戸時代の版木や浮世絵は、とても貴重なことがわかります。

見学会は不定期のようですが、みなさんも現代の浮世絵の技の髄に触れてみてはいかがでしょうか。

 
 

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