『べらぼう』胸が震えた名シーン…決意を固めた“同じ成り上がり”の田沼意次と蔦重の覚悟を考察【前編】:4ページ目
最後まで「政」を考えるのが好きだった
邸を辞すときに、部屋で皆が箱の中に紙を入れている“入れ札”(投票のような)を行っているのを見かけた蔦重。
「何をしているのか?」と聞くと「誰に何の役目を頼むかというのは常に、上が決めることだが、別に皆の考えで決めてもいいのではと思うてな。これを国をあげてやったら面白いことになると思わぬか?世はひっくり返るかもしれぬ」と答えます。
その民主的な発想と先見の明は、どこからきたのでしょうか。「田沼様、その制度は100年後に「選挙」という制度で実現するのですよ」と言いたくなる場面でしたね。
その発想に驚きながら「田沼様ってえのは…」という蔦重に、後から「べらぼうでござろう!」と笑いながら話しかける三浦庄司(原田泰造)。
最後の最後まで、この世をどうしたら面白くできるかと政を考えていた田沼意次。「べらぼう」で描かれた人物像は、自分は「成り上がり」という気持ちもあったのか、身分に分け隔てなく話を聞き、自分のせいで周囲を巻き込むまいと配慮をする…そんな人間味ある人物に描かれていました。
実際『田沼意次遺訓』という文書には、「きちんと武芸に励んでいれば、余裕があったら遊んでもかまわない」「百姓や町人に無慈悲なことをすな」などと書いてあったそうです。
作品によって人物像が異なる意次ですが、べらぼうでは、その人柄が偲ばれるこの文書をもとに、ドラマのような人物像を構築していったのかななどと想像しました。
【後編】では、腹を括った蔦重がチーム蔦重のクリエーターたちにその思いを伝え、気持ちが一丸なった流れを考察します。
【後編】の記事はこちら↓
『べらぼう』書をもって世に抗う!ふんどし野郎(松平定信)の締め付けに抵抗する蔦重の戦い【後編】
田沼意次(渡辺謙)と蔦重が奔走して、江戸の混乱「打ちこわし」が収まったのに、さも自分の手柄のようにあることないこと「読売」に提灯記事を書かせる松平定信(井上祐貴)。それを読んで「松平様はさすが…

