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『べらぼう』胸が震えた名シーン…決意を固めた“同じ成り上がり”の田沼意次と蔦重の覚悟を考察【前編】

『べらぼう』胸が震えた名シーン…決意を固めた“同じ成り上がり”の田沼意次と蔦重の覚悟を考察【前編】:3ページ目

田沼意次の意志を受け継ぐ蔦屋重三郎

田沼邸を訪れた蔦重。意次は、開口一番、「何かあったか、ありがた山。まさかそなたにまで何か累が?」と、まずは案じる言葉をかけたのが印象的でしたね。このような人柄を知っていたからこそ、蔦重は自分の覚悟を伝えます。

「田沼さまが作り出した世が好きでした。皆が欲まみれでいい加減で。でもだからこそ心のままに生きられる隙間がありました」
「最後の田沼さまの一派として。田沼さまの世の風を守りたいと思います。」

改めて、堂々と自分は「田沼派である」と宣言する蔦重には、揺るのない覚悟が感じられました。

「同じ成り上がり同士であるからな」と言う意次は「持たざるものにとっては面白い時代でも、持っているものにとっては、面白くなかったかもしれない。時代が変わってもしかたない」と言います。

けれども、蔦重は、自分は「書を持ってそんな世の中に抗う」と言います。そのために「田沼さまの名を貶めてしまうかもしれない。お許しいただけるか」と申し出たのでした。これは、四面楚歌状態になっていた意次にとっては、きっと心震えるほどうれしかったのではないでしょうか。

ここから、冒頭でご紹介した会話、

「ありがた山の寒がらすにございます!」「こちらこそかたじけ茄子(なすび)だ!」

になったのでした。

ドラマ初回の時は意次との間にかなり距離がありましたが、今回は座っていた意次がさっと距離を詰め、蔦重の手をしかと握り、「かたじけ茄子(なすび)だ」と手をポンポンと叩き笑います。

意次の言葉は蔦重への感謝と、齢70となろうとする自分が、生きて蔦重に会えるのも、これが最後かもしれないという万感の思いが込められていました。二人の間の思いは一つ。意次の精神が、蔦重に受け継がれた瞬間でした。

4ページ目 最後まで「政」を考えるのが好きだった

 

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