大河『べらぼう』誰袖に戻った笑顔「筆より重いものは持たねえ」名プロデューサー・蔦重の見事な仇討【前編】:4ページ目
〜「浮き名」を流したいバカ旦那の奮闘『江戸生艶気樺焼』〜
主人公の大金持ちの放蕩息子はその名も「仇気屋」艶二郎。「仇屋」にしたのは蔦重の計らいです。この本で「仇討ちをする」との意思表明でしょう。
仇屋艶次郎は、寝転びながら呑気に心中ものの本を読んでいるうちに自分も「浮き名を立てられたいな」と、実にばかばかしいことを思い付きます。
モテ男を演出するために、腕に女性の名前を彫ってもらい消してはまた女性の名前を彫ってもらったり。(「色男ってのは痛えな〜」には笑ってしまいました)
また、押しかけ女房に困っているモテ男だと噂を立てるために、近所の芸者を家に呼びお金を出して大声で「死にますよ〜」と周囲に聞こえるように叫んでもらったり。「色男は嫉妬されて殴られるもの」という設定で、金でやとったならずものにわざと殴っらせて、ザンバラ髪になってみたり。
とにかくやることなすことアホ過ぎるのですが、そのアホな艶二郎を演ずるのが手拭いの男と同じ「団子鼻」の付け鼻をした北尾政演という演出も面白かったですね。
いろいろ「浮き名を流すため」努力をしても評判にならず、しまいには読売(瓦版)に書いてもらっても、誰も興味を持たず。鶴屋が読売の売り手になって、売れない読売を売るのですが、町の人々は「艶二郎?誰それ」という感じで読んでもくれません。「もう、タダでいいから持っていって!」にも笑わされました。
そして、艶二郎は「間夫」と呼ばれたいがために、花魁「浮名」(演ずるのは誰袖)にかけ落ち心中を持ちかけ「いやです」と断られるも「じゃ身請けするから!」と言い承諾させます。
駆け落ち心をする艶二郎と浮名は、白地の揃いのド派手な柄の着物(ベルサーチのようなド派手柄で、丸に『艶』の字が)を見にまとい、妓楼の2階から梯子をかけ、「とざいとうざい〜」の掛け声で始まった次郎兵衞兄さん(中村蒼)の三味線のBGMをバックに降りていきます。
妓楼の人々に「ごきげんようお駆け落ち〜」と笑顔に見送られ「おう!また来るぜ!」を答えるという、ほんとにバカバカしいお話でした。
この本の内容を、大河ドラマ上初ともいわれる異例の10分間にわたる「劇中劇」で見せてくるとは、森下脚本のアイデアには感心します。
登場人物たちの素人っぽい大げさな棒演技がより「作り物のフィクション」話であることが強調されて、実に笑えましたね。そして、このド派手な心中駆け落ち騒動で、誰袖は笑顔になり、視聴者は涙する場面に。【後編】の記事はこちらから



