
大河「べらぼう」に登場!遊女を”花”に見立てた蔦屋重三郎 初の出版本『一目千本』を解説【後編】:2ページ目
江戸で流行った生花「抛入花」に発想を得る
北尾重政に画を依頼した『一目千本』は、さまざまな遊女を「花」に見立てて、その人の個性や雰囲気などを花の種類で表現するという手法で作りました。
対象を「何か別のものに見立てる」という文化は、古来から日本に存在していたものです。
たとえば、見立ての技を競うような和歌、石・砂・木などを使い川や海などに見立てる日本庭園などは代表的なものといえます。
さらに江戸時代には、画や言葉に見立ての技を取り入れるのが流行っていたそうです。
【前編】でもご紹介しましたが、当時の江戸では形式に縛られずに楽しむ「抛入(なげいれ)」という生花のスタイルが流行っていました。
まあ、蔦中が『一目千本』を出版する数年前の明和7年(1770)には、洒落本作家の蓬莱山人が、各界の著名人を花になぞらえた『抛入狂花園』という本を出し話題になったということもありました。
そこで、蔦重が「吉原遊郭の宣伝になるような本を」と思いついたのが、『一目千本』だったのです。