先陣決め、縁起かつぎ…戦国時代にどんな武将も大切にしていた「出陣の儀式」をご紹介:2ページ目
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出陣の儀式
こうした儀式では、まず主将が酒を三度注いでもらって飲み干す「三献の儀」を行います。
酒肴には、一杯目には勝栗、二杯目には打鮑、三杯目には昆布が用いられました。「打ち勝って喜ぶ」と縁起をかついだのです。
それらがないときは「人切れ」という意味で、漬物一切れが使われました。
三献の儀式が終わると、主将に兜や鎧を着せます。このとき、介添えをする者は必ず左廻りに動きました。右に回るのは逃走に通じるからです。
鎧を着た主将は、右手に軍扇を開いて、左手に弓を持ち、兵たちの前に立ち上がります。そして足を開いて踏ん張り、「えい、えい」と叫びました。
これに、兵たちは「おう」と呼応して三度繰り返します。この鬨の声の威勢がいいほど士気は上がり、勝運が近づいたとされました。
式が終わると主将は馬に乗りましたが、これにも決まりがありました。
出陣式で退くというのはタブーなので、主将の乗った馬が退いたり、敗北に通じる右廻りをしたら、一度、馬から降りて乗り直したのです。
出陣式は、それほどに念入りに行われた儀式でした。
参考資料:歴史の謎研究会『舞台裏から歴史を読む雑学で日本全史』2022年、株式会社青春出版社
画像:photoAC,Wikipedia
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