何たる暴挙!平安貴族・藤原行成(演:渡辺大知)が恥辱を受けた藤原實方のありえない行動とは?【光る君へ】:3ページ目
「そなたに殴られる筋合いはない」行成の毅然たる態度
……行成少しもさわがずして、とのもり司をめして「冠取りて参れ」とて冠して、守刀よりかうがいぬき取りて、鬢かいつくろひて、居なほりて「いかなる事にて候ふやらん、忽ちにかうほどの乱罰に預るべき事こそ、覚え侍らね。その故を承はりて、後の事にや侍るべからん」と、ことうるはしういはれけり。実方は志らけてにげにけり。……
※『十訓抄』詳解 下巻「第八 可堪忍于諸事事」より
【意訳】冠が脱げて頭髪をさらしてしまった行成。しかし慌てず騒がず、主殿司(とのものかみ。御殿の管理職員)を呼び出して「冠をとって参れ」と指示。
護身用の守刀から笄(こうがい。一本櫛)を引き抜き、優雅な手つきで髪を整え、冠をかぶり直しました。
そして實方に対して叱りつけます。
「中将(ちゅうじょう。實方)よ、これは一体いかなる仕打ちか。そなたに殴られるような覚えはないぞ。もう少し後先を考えて行動せよ」
その凛然と美しい振る舞いに、我が身が恥ずかしくなった實方は逃げ出してしまったのでした。
いやはや、パンツを脱がされた(ような仕打ちを受けた)というのに、まこと立派な態度です。
落とされた冠を慌てて自ら拾うような失態も犯さない点も、平素から動じない精神が感じられます。
これじゃあ、どちらの冠(パンツ)が脱げたか分からない……人々はたいそう感心したことでしょう。