「鎌倉殿の13人」ばかにするな!坂東武者を奮起させた尼将軍の怒り。第47回放送「ある朝敵、ある演説」振り返り:3ページ目
自分さえ犠牲になれば…ナルシズムに血迷う義時
「義時の首を差し出せば兵を収める≒赦してやる(意訳)」
そんな院宣に対して、あっさり首を差し出そうとする義時。自分一人のために鎌倉を灰にする訳にはいかない、自分さえ犠牲になれば鎌倉が救われる。きっとそんな思いだったのでしょう。
だがちょっと待って欲しい。その選択はこの手の交渉で最も悪手と言わざるを得ません。だってこれが悪しき前例として「今後、朝廷が気に入らないと言えば誰であろうと首を差し出さねばならない」のですから。
もちろんそれは、義時が鎌倉を託すと言った最愛の嫡男・北条泰時(演:坂口健太郎)であろうと、です。
「ネズミにミルクを与えれば、次はチーズを要求してくる」
不当な要求に対しては、どれほど犠牲を払おうと、拒否しなければ事態は悪化の一途をたどるばかり。義時一人がカッコつけたいのも結構ですが、それだと結果として鎌倉は救われないのです。
泰時(次世代)に鎌倉を託すためと言うなら、ここは万難を排して闘い抜く以外にない。それは数百年の歳月を経た現代においても変わりません。
また劇中では言及がなかったものの、京都で滅ぼされた光季が自刃に臨んで発した言葉。
「南無帰命頂礼鎌倉八幡大菩薩若宮三所。我が身命を投げうって権大夫(義時)の武運長久を祈願し奉る」
※『承久記』より
わずかな兵で最期まで闘い抜き、八幡様に義時の武運を祈り「後は任せた。きっと仇をとってくれ」と散華した光季。その思いを無下にして、何がカッコいいと言うのでしょうか。
……まぁ、この辺りは近ごろ精神的にギリギリな義時の迷いを表現していたのかも知れませんね。