「鎌倉殿の13人」和田一族滅亡、義時の目にも涙…第41回放送「義盛、お前に罪はない」振り返り:3ページ目
消化不良な合戦場面と、巴御前の退場
全体を通して迫真の演技に魅せられた本作の和田合戦ですが、せっかく登場させた朝比奈義秀はじめ、史料の設定があまり活きていないように感じられました。
こと朝比奈義秀は神のごとき武勇を輝かすことなく、ただ「一族の中でも血気盛んな武闘派の一人」程度にしか描かれなかった印象です。
前回時点で登場していない人物(横山時兼、土屋義清、古郡保忠など)については既に割愛を覚悟していたものの、せめて義秀だけでもと望みを賭けていたのは、筆者だけではないでしょう。
「さぁ始まったぞ。みんな必死に戦っているな。これからあの名場面。楽しみだ!」
……あれ。御所の惣門は普通に破城槌で突破されたし、惣門を守ろうと内側から抑える描写もない。御所を残らず焼き払いもしなければ、義秀らが敵の大軍に殴り込んで「無双」するシーンもありません。
せめて義秀が人並外れた怪力を魅せる描写は欲しかったところ。和田勢の奮戦を象徴(集約)する存在として義秀に期待していた分、何だか消化不良な感じです。
「早くお逃げ下され……」
由比ヶ浜で待っていた巴御前に義盛の討死を伝え、力尽きた義秀。巴御前がその頭に触れた(撫でた?)のは、義秀が巴御前の子であるとする伝承(『源平盛衰記』など)を暗示したのでしょうか。
それにしても、義秀の扱いが軽く感じられてなりません。高麗まで渡れ(※『和田系図』)とは言いませんが、せめて『吾妻鏡』にある通り上総国へ渡って再起を図るくらいのしぶとさは見たかったものです。
さて、義秀最期の報告を受けて、巴御前は決意しました。
「俺は必ず生きて帰る。その時にお前がいなかったら、俺、困っちまうよ」
出陣前、義盛の言葉を聞いて思いとどまった巴御前。義盛が死んだ以上、もはやこの世に未練はなかったものの、やはり義盛の遺言を守って生き延びます。
「我こそは忠臣和田義盛が妻、巴なるぞ!」
夫・義盛の直垂を身に着け、敵中を突破した巴御前。『平家物語』の木曽殿最期を思わせる退場の花道に、多くの視聴者が胸をすかせたことでしょう。