【鎌倉殿の13人】前原滉が演じる一条忠頼、忠実ではどう殺された?『吾妻鏡』を読んでみると……
義時「一条忠頼。源義高をそそのかし鎌倉殿への謀叛をたくらんだ。その咎によって成敗いたす!」
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で源義高(演:市川染五郎)に謀叛をそそのかし、その咎によって粛清された一条忠頼(演:前原滉)。
義時「これは警告です。二度と鎌倉殿と競い合おうなどとお思いになりませぬよう」
嫡男・忠頼の暗殺によって甲斐源氏は勢力を削がれ、武田信義(演:八嶋智人)は源氏の棟梁争いから脱落していくのでした。
……さて、劇中では工藤祐経(演:坪倉由幸)が及び腰であったため仁田忠常(演:高岸宏行)が斬り捨てていましたが、実際はどうだったのでしょうか。
今回は鎌倉幕府の公式記録である『吾妻鏡』から、当日の記述を紹介したいと思います。
一条忠頼を斬ったのは……
元暦元年六月小十六日癸酉。一條次郎忠頼振威勢之餘。挿濫世志之由有其聞。武衛又令察給之。仍今日於營中所被誅也。及晩景。武衛出于西侍給。忠頼仍召參入。候于對座。宿老御家人數輩列座。有献盃之儀。工藤一臈祐經取銚子。進御前。是兼被定于其討手訖。而對于殊武將。忽决雌雄之條。爲重事之間。聊令思案歟。顏色頗令變。小山田別當有重見彼形勢起座。如此御杓者。稱可爲老者之役。取祐經所持之銚子。爰子息稻毛三郎重成。同弟榛谷四郎重朝等持盃肴物。進寄于忠頼之前。有重訓兩息云。陪膳之故實者上括也者。閣所持物。結括之時。天野藤内遠景承別仰。取太刀進於忠頼之左方。早誅戮畢。此時武衛開御後之障子。令入給云々。其後。忠頼共侍新平太。并同甥武藤与一及山村小太郎等。自地下見主人伏死。面々取太刀。奔昇于侍之上。縡起於楚忽。祗候之輩騒動。多爲件三人被疵云々。既參于寢殿近々。重成。重朝。結城七郎朝光等相戰之。討取新平太。与一畢。山村者擬戰遠景。相隔一ケ間。取魚板打之。山村顛倒于縁下之間。遠景郎從獲其首云々。
※『吾妻鏡』元暦元年(1184年)6月16日条
一条次郎忠頼はかねてより威勢を振るうあまり、世を乱す≒鎌倉殿への謀叛をたくらんでいると噂されていました。
頼朝はそれを危惧して先手を打つべく、御所で酒宴を開いて忠頼を招待します。夜になって頼朝が会場に入り、忠頼を呼んで向かい合いました。
「さぁさぁ、一条殿。まずは一献……」
忠頼にお酌しようと工藤一臈祐経が近づいてきます。祐経は忠頼を討つ役目を与えられていたものの、いざ事に臨んで怖気づいたのか、顔色まで変わってしまう有り様。
(まずい、これでは暗殺計画がバレてしまう!)
近くにいた小山田別当有重(おやまだの べっとうありしげ)が席を立ち、祐経から銚子を奪いました。
「工藤殿、ここはそれがしがお酌いたしましょう。ちょうど愚息らに給仕の作法を教えたきゆえ……」
有重は二人の息子、稲毛三郎重成(いなげの さぶろうしげなり)と榛谷四郎重朝(はんがやの しろうしげとも)を呼んでレクチャーを始めます。
「よいか。給仕の時は上括(しょうくくり)と申して……袴の裾を膝下で括るのが作法じゃ。ほれ、さっそくやってみよ」
「「ははあ」」